青色申告の個人事業主がクレジットカード払いをした際の仕訳方法について
長期的に安定した経営を行うためには、利益の仕組みについて知ることが重要です。
本記事では、決算書における利益の種類について、それぞれの利益の違いや利益の計算方法を知りたい方へ向けて詳しく解説します。
自社が得ている利益の詳細を知ることは、来期以降の戦略を立てたり経営を安定化させたりするのに役立ちます。
しかし、中には決算書の詳しい読み方がいまいち分からないという経営者がいることも事実でしょう。
本記事では、損益計算書において分類される5種類の利益について、それぞれの違いや具体的な計算方法を詳しく解説します。
利益とは、平たい言葉で「儲け」を意味します。法人経営においては、売上からそれを得るためにかかった費用を差し引いた差額のことです。
たとえば同じ100万の売上があった場合でも、50万の費用をかけて得たものであれば利益は50万、60万の費用をかけた場合の利益は40万になります。
利益と近い意味を持つ「所得」は、税務的な考えによって計算される儲けのことです。法人税額などを決める基となり、利益とは計算方法も異なります。
一方で「利益」は、法人の経営状況および財務状況をより正確に示すためのもので、会計的な考え方を基に算出されます。
本記事では、「利益」の種類や計算方法について解説します。
利益を確認できるのは、決算書類の中のひとつである「損益計算書」です。損益計算書とは一定期間内における収支を表した書類で、利益は段階的に計算された5種類に分類されます。
損益計算書における利益は、金融機関が融資を行うかの判断材料にされることもある重要な書類です。経営状況が思わしくないと判断されれば、融資を断れてしまうこともあるでしょう。
また、経営者自身もそれぞれの利益の種類の意味を把握することで、今後の経営戦略に役立てることが可能です。
尚、損益計算書と同様に法人の状況を示す「貸借対照表」は、法人の所有する財産(預金や不動産等)および負債(借入金等)などの財務状況を示す書類です。
【利益とは】
利用料金 | ベーシックプラン:6,000円/年間 ※次年度より12,000円/年間 |
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無料体験期間 | 1年間(セルフプラン) ※次年度より8,000円/年間 |
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タイプ | クラウド型 |
決算書類のひとつである損益計算書において、利益は5つに分類して記載されます。
本項では、それぞれの利益が意味するものの違いや計算方法を具体例を挙げながら解説します。
売上総利益は、商品やサービスを販売して得た売上高から、その商品の原価との差額です。「粗利」「粗利益」などと呼ばれることもあります。
売上原価に該当するのはあくまで仕入高であり、人件費などは含みません。たとえば飲食店の場合、食材の仕入れにかかった原価について引いたものが売上総利益に値します。
営業利益は、売上総利益から更に販売管理費と一般管理費を引いたものです。
販売管理費とは商品を販売するために直接的に必要であった費用のことです。飲食店の場合であれば、スタッフへの給与や広告宣伝費などが該当します。
また、一般管理費は事業を営むうえで必要な費用で、販売管理費には含まれないものを指します。飲食店の場合、店舗を維持するために必要な家賃や水道光熱費などが一般管理費です。
尚、販売管理費と一般管理費は区別しないことも珍しくないため、併せて「販管費」と呼ばれることもあります。
営業利益は、その法人の主な営業活動(本業)で得た利益のことを指すものです。たとえば飲食業であれば、飲食店経営から得られる直接の利益を表します。
経常利益とは「経常」の言葉のとおり、突発的ではなく基本的に毎期繰り返して発生する利益という意味があります。
なお「経常」の正しい読みは「けいじょう」ですが、音で「計上」と区別するのが難しいためあえて「けいつね」と呼ばれることも珍しくありません。
具体的な計算方法としては、本業の利益(営業利益)に本業以外の営業活動で得る収益(営業外収益)を足し、更に営業外費用を引いたものです。
営業外収益の例は以下の通りです。
このように法人名義で行う財務活動を通じて得た収益が営業外利益に該当します。
また営業外費用とは、営業活動(本業)とは関連のない費用のことです。たとえば借入金の返済にかかる利息や支払手数料などが該当します。
税引前当期純利益とは法人税等を引く前の利益のことで、会計期間内の純粋な利益です。
経常利益に特別収益を足し、更に特別損失を引いて求めることができます。
特別利益とは、法人名義の株や不動産を売却して得た収益などが該当します。営業活動にも営業外活動にも該当せず、突発的に発生する利益のことです。
特別損失は、例外的に発生する損失を意味しており、盗難・火災などによって発生する損失などが該当します。また株や不動産の売却において購入時より低い価格で手放すことになれば、差額が損失となります。
当期純利益とは、会計期間内の最終的な利益のことで「最終利益」「税引後当期純利益」「純利益」などと呼ばれることもあります。
税引前当期純利益から法人税や住民税、事業税などを引いて計算されます。また、税効果会計を適用している場合に限り、更に法人税等調整額を加減します。
当期純利益の額がマイナスになれば赤字決算、逆にプラスになれば黒字決算となります。
【損益計算書における利益の種類と計算方法】
売上総利益(粗利) | 売上高 - 売上原価 | ||
---|---|---|---|
営業利益 | 売上総利益 - 販売管理費および一般管理費 | ||
経常利益 | 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用 | ||
税引前当期純利益 | 経常利益 + 特別利益 - 特別損失 | ||
当期純利益 | 税引前当期純利益 - 法人税、住民税及び事業税 ※税効果会計を適用している場合は更に(±法人税等調整額) |
利益は5つに分類することで、同一会計期間内において何でどのくらい収益(儲け)を得たのかを細分化して知ることができます。
前項で解説したように、最終的に導き出されるのは「当期純利益」です。しかし当期純利益の数字だけを見ても、経営状況を詳しく知ることは困難です。
具体例として、以下に2つの法人のケースを取り上げます。
法人A | 法人B | |
---|---|---|
売上高 | 3000 | 1000 |
売上原価 | -1500 | -1200 |
売上総利益 | 1500 | ▲200 |
販売管理費および一般管理費 | -700 | -200 |
営業利益 | 800 | ▲400 |
営業外損益 | +400 | +100 |
経常利益 | 1200 | ▲300 |
特別損益 | -300 | +1200 |
税引前当期純利益 | 900 | 900 |
法人税等 | -300 | -300 |
当期純利益 | 600 | 600 |
法人Aおよび法人Bは、いずれも最終的な「当期純利益」は同額の600です。しかし5つの利益についてそれぞれ注目することで、両者の経営状況の違いが明らかになります。
法人Aはすべての利益で黒字を示しており、今期の経営が良好であったことが明らかです。
一方で法人Bは、売上高から費用を引いた「売上総利益」、本業の利益を示す「営業利益」および営業利益に財務活動の収益を加味した「経常利益」がいずれも赤字を示しています。最終的に黒字を示しているものの、臨時的な特別損益で持ち直していることは明白です。
特別損益は不動産の売買など臨時的なものが該当するため、来期も同様の収益を見込めるものではありません。そのため法人Bの経営状況は思わしくないといわざるを得ないでしょう。
このように利益を細分化することで、当期純利益だけでは見えてこない経営の実態をつかむことが可能なのです。
5つの利益の中で、経営状況を総合的に表しているのは「経常利益」です。
前々項「損益計算書における利益は5種類!それぞれの違いとは」(ページ内リンク)で解説したように、5つの利益はそれぞれ以下のことを表しています。
営業利益では本業についての利益しか分からず、仮に黒字であっても財務活動を考慮すると最終的に赤字になる可能性があります。
また、税引前当期純利益は臨時的な損益が影響するため、仮に黒字であっても次年度の継続性が期待できない場合があります。
経常利益は、本業の利益と継続的に行われる財務活動の利益を総合的に表しています。そのため会計期間内の経営状況だけでなく、長期的に安定した事業活動を継続していけるかどうかを判断する指針となるのです。
もちろんすべての利益が黒字であることが理想的です。しかし、中でも法人経営者がもっとも意識して黒字を目指したいのは経常利益なのです。
損益計算書において、利益は段階的に計算されます。そのため経常利益の計算に関わる営業利益、および営業利益の計算に関わる売上総利益が黒字となっていれば経常利益も黒字になりやすくなります。
売上総利益は、よほどの事情がない限り自然に黒字になるべきものです。もしも売上総利益が赤字の場合、商品が売れるたびに赤字が膨らんでしまうという通常では起こりえない状態に陥っています。そのため早急に販売価格や仕入値を見直す必要があります。
主な事業の損益を表す営業利益が赤字の場合、売上に対して経費がかかりすぎている状態です。削減できる経費はないか見直すことで黒字化を目指しましょう。なお、継続的に必要な固定費の削減が特に有効です。
営業利益の黒字が大きければ、万が一財務活動における赤字があっても補填することができ結果的に経常利益は黒字になります。
営業利益の赤字が解消できなかった場合でも、それを上回るだけの営業外利益を得ることができれば経常利益は黒字となります。
ただし、営業外利益とは財務活動によるもののため、コントロールが難しいという側面があることも事実です。
投資先を増やしてリスクを分散する、借入先の金利が高ければ乗り換えるなど、長期的な視点でバランスよく行うことが大切です。
決算書類のひとつである損益計算書において、利益は段階的に計算された5つに分類されます。
売上総利益 | 売上高と原価の差額:商品そのものの純粋な利益 (売上高 - 売上原価) |
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営業利益 | 主な事業(本業)に関わる利益 (売上総利益 - 販売管理費および一般管理費) |
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経常利益 | 事業全体(本業+財務活動)の利益 (営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用) |
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税引前当期純利益 | 経常利益に臨時的な損益を考慮した期間内全体の利益 (経常利益 + 特別利益 - 特別損失) |
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当期純利益 | 税引前当期純利益から法人税などを引いたもの (税引前当期純利益 - 法人税、住民税及び事業税) ※税効果会計を適用している場合は更に(±法人税等調整額) |
中でも経営状況の全体像を表す経常利益は、特に注目すべき重要なものです。長期的に安定した法人経営のためには、意識的に黒字化を目指しましょう。