飲食店の廃業時に真っ先にすべきことは?廃業コストを最小限に抑えるコツは?

飲食店の廃業にかかるコストを抑えるためには、どんな手順でどんな手続きをすれば良いのか、その対策方法を紹介します。

あらゆる手を尽くしても、売上不振でお店をたたむことを余儀なくされることはあります。残念ながら飲食店を閉店することになった時、廃業するにもさまざまなコストがかかることはご存知でしょうか?

どういった手続きをどのような手順で行う必要があるか、コストはどのくらいかかるのか、廃業コストを少しでも抑える対策にはどんなものがあるのか、廃業を検討した際の参考にしてください。

飲食店の廃業を検討するとき、真っ先にすべきこととは?

運転資金が底を尽き閉店を決意したとき、まず解約の手続きのために不動産会社に連絡をして、次にさまざまな必要手続きをして…と考えると思います。

しかし、さまざまな手続きをするその前に、やるべきことが2つあります。賃貸契約書の内容の確認借入金やリースなど残高の確認です。

実際に動き始める前に、コストシミュレーションで現状を把握し、計画的に廃業を進めることがコスト削減につながります。

賃貸契約書の見直し

まず賃貸契約書の内容を確認します。ここで重要なのは以下の4点です。

  • 解約予告期間
  • 敷金返還の時期
  • 敷金返却時の償却額
  • 原状回復義務の有無(明け渡しの条件)

賃貸借契約書には「解約の場合は○ヶ月前までに通知すること」といった記載があります。これが解約予告期間です。「解約する」と通知してからも、この期間内であれば家賃を払い続けなければなりません。

解約予告期間は長くて8ヶ月、短くて1ヶ月、概ね3~5ヶ月が一般的です。この条文だけを見ても、家賃の支払いのためにすぐにはお店を辞める訳にはいかないことを痛感されるのではないでしょうか。

次に契約時に大家に預けた敷金返還のタイミングを確認します。良心的なところでは「契約終了後速やかに返還」となっていますが、「明け渡し後債権債務の精算を行い1ヶ月以内に返還」が一般的です。

中には「物件明け渡し後6ヶ月以内に返還」というものもあり、資金繰りが大変な時には厳しいものです。

敷金返還時に大家さんが受け取る償却額も記載されています。預けた敷金は全額返ってくるわけではなく、一般的に月額賃料の1~3ヶ月分が差し引かれます。全額返ってくることを期待していると大きな誤算となるため、必ず確認しましょう。

さらに解約時に負担となるのが、明け渡しの条件となっていることが一般的な原状回復義務です。原状回復工事と呼ばれる工事費用が発生し、これが相当な支出となります。

例えば、床・壁・天井・設備等すべて撤去した状態(スケルトン状態)に戻す場合は、飲食店の規模にもよりますが50~100万円の費用がかかります。

ただし、次に入るテナントの有無や汎用性によっては、明け渡しの条件について交渉の余地がある場合もあります。大家によっては柔軟に対応してくれる場合があるため、解約の申し出に合わせて、できるだけ早期に交渉しましょう。

借入金やリースなどの残高の確認

現在いくらの借入金が残っているのか、リースを組んでいた場合の残債はいくらあるのか、正確に把握する必要があります。

飲食店を開店する際に、日本政策金融公庫や信用金庫、地方銀行などの金融機関で融資を受けていることはよくあります。

公庫や銀行の場合は、金消契約すなわち金銭消費貸借契約の締結時に作成される、返済完了までの月々の返済額と残額を記した書類「金銭消費貸借契約書」を確認します。万が一、紛失した場合は借入先の金融機関にて再交付が可能です。

閉店する時点でまだ返済期間中の場合、廃業後も月々の支払いの継続が可能であっても、必ず金融機関へ訪れて事情を説明する必要があります。なぜなら金融機関との人間関係や取引履歴は信用上とても大切なものだからです。

そのまま放置してしまうと、保証金や敷金の差し押さえなど、強硬な手段をとられる場合もあります。しっかりとコミュニケーションをとっておくことは今後のために重要です。

廃業を報告すると内容によっては個人名義の融資へ書き換えを要求されるケースもあります。ただし、残額の一括返済を請求されたりはしないので安心してください。

厨房機器等リースに関しても同様です。中途解約ができるかどうか、残りの期間のリース料や中途解約違約金の額などを調べます。

リース会社によっては、書面の送付が問合せ後数週間待たないと送られてこない場合もあるため、できるだけ早い対応を心がけましょう。

飲食店の廃業時に必要な手続き

飲食店の廃業時に必要な手続き

それでは、廃業のために必要な手続きの流れを見ていきましょう。ここでは個人事業主で居抜き専門業者を利用する場合の閉店まで流れを紹介しています。手順は必ずしもこの通りとは限りません。

① 居抜き専門業者に依頼
② 借入金について各金融機関に相談
③ 不動産管理会社へ解約の告知
④ 従業員へ解雇の通知
⑤ 取引先へ連絡
⑥ 顧客への告知
⑦ 造作譲渡の契約の締結
⑧ リース物件の精算とレンタル品の返却
⑨ 賃貸契約の解約
⑩ 電気・ガス・水道の解約
⑪ 物件の引き渡し
⑫ 保健所・警察署・税務署等行政機関への届出

上記項目の詳しい手続き方法について、抜粋して説明します。

取引先へ連絡

食材や酒類の仕入れ業者への連絡もなるべく早期に必ず行うようにしましょう。

取引先としても売掛金の未払いリスクを避けるために、翌月払いだった支払条件を当月払いに指定したり、即現金払いでないと品物は届けられないといわれることもあります。

顧客への告知

今まで利用してくれた顧客に対し、閉店の挨拶は必ずしたいものです。挨拶状を印刷したりする必要はありません。

個別に連絡先が分かる方にはメールなどで挨拶文を送ったり、店先には閉店ご挨拶の貼り紙を出し、SNSでお知らせしたりします。後々、お店を再開した際に再び来店してもらえるような関係性を築きましょう。

リース・レンタル品の返却

リース・レンタル品の返却手続きも必ず怠らないようにしましょう。返却の手続きを忘れてしまったばかりに、レンタル品が廃棄されてしまって高額の料金を請求されるケースもよくあるため注意が必要です。

一般的なものは以下の通りです。

  • 厨房機器
  • 冷蔵冷凍庫
  • ガスコンロ
  • 食洗器
  • グリスフィルター
  • ビールサーバー
  • おしぼりウォーマー
  • 有線放送などの音響設備
  • 玄関マット
  • 請求書に記載されている連絡先に電話し、閉店後の引き取り日時を決めましょう。

    保健所への届け出

    所轄の保健所へ「廃業届」を提出します。あわせて「飲食店営業許可書」を返納してください。提出期限は営業を停止した日から10日以内です。

    書類形式は保健所によって異なるため、所轄の保健所で確認が必要です。電子申請が可能な保健所もあります。

    警察署への届け出

    「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」を提出している場合、所轄の警察署に廃止事由を記した「廃止届出書」を提出します。また、「風俗営業許可証」を保持している場合、「返納理由書」とあわせて所轄の警察署へ返納します。

    どちらも、廃業したら速やかに返納することが求められており、廃業日から10日以内が期限です。詳しくは所轄の警察署にご確認ください。

    また、許可証は記念に保管したり、他人に譲ったりせず必ず返納しましょう。手続きを怠ると罰金や罰則を受けることがありますので注意が必要です。

    消防署への届け出

    具体的に提出期限はありませんが、廃業日を解任日とし「防火管理者選任(解任)届出書」を提出します。用紙は所轄の消防署、または消防署HPから取得できます。同じく開業時に提出した「防火対象設備使用開始届」は、返納の必要はありません。

    税務署への届け出

    税務署への書類には以下の4種類があります。

    • 個人事業の開業・廃業等届出書
    • 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
    • 所得税の青色申告の取りやめ届出書
    • 事業廃止届出書

    <個人事業の開業・廃業等届出書>
    個人事業主として営業していた店舗が該当します。廃業日から1ヶ月以内の提出が必須です。

    <給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出>
    は、従業員を雇っていたり、専従者がいた場合に、営業停止から1ヶ月以内に提出してください。

    <所得税の青色申告の取りやめ届出書>
    今までおこなっていた青色申告をとりやめる場合に提出します。青色申告をとりやめた年の翌年3月15日までに提出しなければなりません。

    <事業廃止届出書>
    消費税の課税事業者が廃業した際に提出するものです。営業停止後の速やかな提出が義務付けられています。

    公共機関(電気・ガス・水道)への届け出

    事前に解約日を電話で告げることで手続きは完了です。もし解約の手続きを怠ると、使用量は発生しませんが、基本料金が発生します。放置すると追徴金が発生するため、少額だからとそのままにせず、必ず手続きをしましょう。

    職業安定所への届け出

    従業員を雇い、雇用保険に加入していた場合には、以下の3種の書類を提出します。

    • 雇用保険適用事業所廃止届
    • 雇用保険被保険者資格喪失届
    • 雇用保険被保険者離職証明書

    雇用保険適用事業所廃止届は廃業から5日以内、その他は10日以内に提出します。雇用保険被保険者離職証明書は3枚複写式の専用用紙で、公共職業安定所の窓口で取得、もしくは郵送で受け取ります。その他は、ハローワークのHPから入手が可能です。

    日本年金機構への届け出

    従業員を雇い、雇用保険や健康保険に加入していた場合には、日本年金機構に届け出が必要です。「雇用保険適用事業所廃止届の事業主控」のコピーおよび「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を廃業日から5日以内に提出します。

    労働基準監督署への届け出

    従業員を雇い、雇用保険・労災保険いずれかの労働保険に加入している場合は、「労働保険確定保険料申告書」を提出します。提出期限は、事業の廃止又は終了の日から50日以内です。

    所轄の労働基準監督署、または所轄の都道府県労働局、日本銀行のいずれかに提出することができます。申告書は所轄の労働基準監督署から郵送でも入手できます。

    廃業コストの算出

    飲食店を閉店するにあたり、廃業にかかる費用は事前に算出しておきましょう。

    各種契約解除の手数料

    厨房機器などにリース契約しているものがある場合は、中途解約ができるかどうかを調べ、残りの期間のリース料や中途解約違約金の額を算出します。また、テナントから退去するまでの水道・光熱費も見積もっておく必要があります。

    賃料

    賃貸借契約書に記されている解約予告期間分の賃料の支払いがいくらになるか計算します。

    従業員の給料

    従業員を雇っている場合、雇用主は解雇予告を30日以上前に行わなければなりません。30日を待たずに解雇する場合であっても、30日分の平均賃金は支払う義務があります。

    原状回復工事費用

    建物の構造や広さ、立地によって費用は異なりますが、坪あたり数万円~10万円程度かかることが一般的です。廃棄物の処分は、原状回復工事に含まれている場合がほとんどですが、自分で処分する場合は処理費用の試算も必要です。

    飲食店の廃業コスト削減のコツ

    飲食店の廃業コスト削減のコツ

    戻ってくる敷金で借入金やリースの残債が相殺できることは稀なケースでしょう。どうしても払いきれないケースも出てきます。できるだけ廃業コストを減らすためには、以下に挙げるポイントを押さえておきましょう。

    費用を無駄にしないためのスケジュール管理

    廃業にはさまざまな費用がかかりますが、無駄のないスケジュールを組むことで節約できることもあります。特に、「いつ解約予告をするか」「いつまで営業するか」が重要です。

    例えば、事前に厨房機器の買取査定や解体費用の見積もりなどを出せば、廃業に必要な期間や費用が明確になります。明確にしてから解約通知を出して、期限いっぱいまで営業することができれば、効率的に廃業ができるはずです。

    居抜き売却

    原状回復にかかる費用は、廃業コストの中でも大部分を占めるものです。そのため飲食業界で増加しているのが居抜き売却です。造作譲渡とも呼ばれます。居ぬき売却のメリットは多数あります。

  • 譲渡による収入
  • 原状回復工事費用の削減
  • 空賃料の削減
  • リースの中途解約金の削減
  • 居抜きとは、内装・什器・厨房設備・冷暖房機器などの造作や備品一式を、すべて次のテナントに譲り渡す方法です。

    通常は有償での譲渡となるため大きな収入となります。また、原状回復工事が必要なくなるため、工事費用は一切不要で費用の削減につながります。

    さらに、造作一式引き渡し時に、新しいテナントは物件オーナーと賃貸契約を結ぶため、解約予告期間にかかわらずその時点で賃料の支払いは終了します。よって、空賃料期間が短縮されてその分の費用が削減できるわけです。

    加えて、リース品がある場合、新しいテナントにリースの契約も引き継いでもらえることもあります。そうなれば中途解約違約金の支払いも必要なくなります。

    メリットの多い居抜きで廃業を決めたなら、居抜き売却の専門業者に問合せすると良いでしょう。親身になって相談に応じ、的確なアドバイスをもらえる業者がおすすめです。

    居抜き売却をしない場合

    魅力ある居抜き売却ですがデメリットもあります。すぐに店舗の譲渡先が見つかるとは限らず、営業赤字が長引くことが懸念されることです。

    営業を続ける体力がもう残っていないギリギリの状態での居抜き売却は困難といえます。その場合の廃業コスト削減には、厨房機器や食器、什器、家具類などを個別で売却します。

    厨房機器を丸ごと引き取ってくれる専門業者もありますが、少しでも高く売るなら複数の買取業者に査定してもらい、見積額の高いところへ売却しましょう。

    おわりに

    いざ廃業するとなっても、事を急いてはいけないことがお分かりいただけたのではないでしょうか。

    実際に動き始める前に、コストシミュレーションで現状を把握し、スケジュールを組んで計画的に廃業を進めることがコスト削減につながります。特に居抜き売却をお考えの場合は、早い段階で計画性をもって進めることが大切です。