個人事業主が納める税金や計算方法は!?節税対策もご紹介!

個人事業主が納める税金や計算方法は!?節税対策もご紹介!

国民の三大義務のひとつである「納税」。働き方が多様化する現代において、自身の納めるべき税金について理解することはとても重要です。

本記事では、個人事業主が納めるべき税金の種類とそれぞれの計算方法について解説します。現在は会社員として勤めているが、個人事業主として独立を考えている方、既に開業して初めての確定申告を控えている方などはぜひ参考にしてください。
※この記事はPRを含みます

働き方によって異なる税金の種類

働き方によって異なる税金の種類

納めるべき税金は、働き方によって以下のように異なります。

<個人事業主の税理士報酬の相場>

働き方 納める税金
会社員 ・所得税
・住民税
個人事業主(フリーランス) ・所得税
・個人住民税
・個人事業税
・消費税

会社員の納める税金の種類

企業に雇用されて働く会社員(サラリーマン)が納める税金は以下の2種類です。

会社員の税金①所得税

会社員の所得税は、その年の所得額に応じて課される税金です。毎月支払われる給与から先取りで天引きされることが一般的なため、個人で手続きや申請を行う必要はありません。

最終的な額は年末調整によって確定し、場合によっては納めた所得税の一部が還付されることもあります。

会社員の税金②住民税

住民税は、前年の所得に対して課せられる税金です。就業2年目以降の会社員であれば、所得税と同様に給与から天引きされます。

た、会社員をやめて個人事業主になった場合、会社員として働いていた前年の給与を基にした住民税を自分で支払う必要があるので、注意が必要です。

個人事業主の納める税金の種類

個人事業主として働く際に納めるべき主な税金は以下の4種類です。

個人事業主の税金①所得税

個人事業主の所得税は、1年間の所得額に応じて国に納めます。給与から天引きされる会社員の所得税とは異なり、自身で年間所得額を計算して確定申告をする必要があります。

また、事業に必要だった経費を計上することで課税対象額が大きく変わることも、会社員の所得税にはない特徴です。

個人事業主の納める税金の計算方法については、他の税金と併せて次の項で詳しく解説します。

個人事業主の税金②個人住民税

個人事業主の住民税は、前年の所得額に応じて納めます。国に納める所得税に対し、住民税は申告年の1月1日時点で住所をおいていた地方自治体に納めることになります。

所得税の確定申告をすることで納税地となる自治体に情報が共有されるため、住民税単体での申告は必要ありません。

個人事業主の税金③個人事業税

個人事業税も、前年の所得に対して自治体に納めます。個人事業税は、職種によって税率が異なることが大きな特徴です。

文筆業や音楽家などは税率が0%と定められているので、所得に関わらず個人事業税を納める必要はありません。

個人事業税の最高税率は5%で、物品販売業、運送取扱業、飲食店業、医業、士業などが該当します。その他の詳しい法定業種と税率については、以下の国税庁のページから確認できます。

参考:所得税の税率 | 国税庁

また、個人事業税は年間290万円の控除額が設けられているため、所得が290万円を下回る個人事業主には免税されます。

個人事業主の税金④消費税

個人事業主の消費税は、前々年の課税売上によって計算されます。そのため、前々年の売上が存在しない開業から2年までは消費税の納付が免除されます。

また、3年目以降でも、前々年の年間課税売上が1,000万円を超えない場合には消費税を納める必要はありません。例外として、前年の6月30日までに課税売上が1,000万円を超える場合には消費税の納付義務が発生します。

次の項では、個人事業主にかかる4つの税金について、具体的な計算方法を解説します。

個人事業主が納める税金の計算方法

個人事業主が納める税金の計算方法

個人事業主が納める税金について、それぞれの計算方法を解説します。

所得税の計算方法

個人事業主納が納める所得税額の計算式は以下の通りです。

◆申告する所得税額=(年間収入額 – 年間経費 – 所得控除)×税率 – 税額控除

年間収入額

事業に関する売上金など、年間で得た収入の合計額です。

個人事業主の事業期間は1月1日から12月31日と定められているため、開業日に関わらず年末締めで計算を行います。

年間経費

経費は事業を行うためにかかった必要費用のことで、開業準備にかかったものも含めることが可能です。またプライベートでも使用するものについては、事業で使用する割合に応じて計算する必要があります。

収入から経費を引いたものを「所得」と呼びます。

所得控除

所得控除とは条件によって差し引くことを認められるもので、代表的なものとして以下が挙げられます。

  • 基礎控除:納税者の所得金額に応じて適用される控除
  • 生命保険料控除:支払った生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の金額に応じて適用される控除
  • 扶養控除:扶養する家族がいる場合に適用される控除
  • 医療費控除:本人および家族の年間医療費の合計が一定額を超えた際に適用される控除
  • 寄付金控除:特定の団体や法人に対して寄付をした際に適用される控除

所得控除は、上記のものを含めて14種類あります。詳しくはこの後の項「個人事業主にできる3つの節税対策」でも取り上げます。

所得から所得控除を引いたものが「課税所得」です。

税率

個人事業主の所得税は、課税所得の増加に伴い税率も上がる累進課税方式が採用されています。課税所得ごとの税率は以下の通りです。

課税所得額※ 所得税の税率
1,000円~1,949,000円 5%
1,950,000円~3,299,000円 10%
3,300,000円~6,949,000円 20%
6,950,000円~8,999,000円 23%
9,000,000円~17,999,000円 33%
18,000,000円~39,999,000円 40%
40,000,000円~ 45%

参考:所得税の税率 | 国税庁

※千円未満の端数を切り捨てた後の金額です。

課税所得に該当する税率をかけたものが「所得税額」です。次に解説する税額控除に該当するものが無い場合は、ここで求めた所得税額を申告します。

税額控除

税額控除は、該当するものがあれば所得税額から更に引くことができるものです。具体的には以下のようなものが挙げられます。

  • 配当控除:配当所得がある際に適用される控除
  • 住宅借入金等特別控除:住宅ローンの残高に対して一定期間適用される控除
  • 住宅耐震改修特別控除:耐震目的で住宅の改修工事を行った際に適用される控除

その他の税額控除の種類や詳しい条件などは以下のページを参考にしてください。

参考:税額控除 | 国税庁

所得税額から税額控除を引いた金額が、最終的に申告する金額となります。

個人住民税の計算方法

住民税の税率は、原則10%(市区町村民税:6%+都道府県民税:4%)で統一されています。

地域によっては独自の税率を採用している場合もあるため、詳細を知りたい場合は自治体ごとに確認しましょう。ただし、個人事業主が各自に計算をしたり申告したりする必要はなく、確定申告で決定した課税所得額に応じて自治体が計算を行います。

個人住民税は、確定申告時に決まる所得税とは別に納める必要があるので覚えておきましょう。

個人事業税の計算方法

個人事業税はすべての個人事業主が納めるものではないため、まずは自分が納税の対象になるかどうかを確認する必要があります。

所得が290万円を超えているか

個人事業税には290万円の控除額が設けられています。そのため年間所得が290万円以下の個人事業主は、事業税の支払義務が免除されます。

法定業種に該当するか

個人事業税は、法定業種に指定された事業を行う個人事業主だけに納税の義務がある税金です。法定業種は70におよび、業種によって税率が3~5%と異なります。

自身の行う事業が法定業種に該当するか、税率はいくらなのかを確認しましょう。

税率

引用:個人事業税 | 法定業種と税率

このように、法定業種に該当し、年間所得が290万円を超えた場合に個人事業税の納付義務が発生します。個人事業税は、年間所得から控除額を引いたものに該当の税率をかけることで求められます。

ただし、個人事業主本人が計算して申告する必要はなく、所得税の確定申告の金額を基に各地方自治体が計算して通知が来ます。

消費税の計算方法

個人事業主の消費税は、年間の課税売上高が1,000万円を超えた場合のみ納める必要があります。また、納税のタイミングが他の税金とは異なり2年後となるため、開業から2年目までの個人事業主は納税が免除されます。

開業から3年目以降で売上高が1,000万円を超えた場合については、以下のどちらかの方法で計算します。

原則課税方式による計算方法

原則課税方式によって消費税の納税額を求める計算式は以下の通りです。

◆納付消費税額 = 課税売上高に対する消費税額 – 課税仕入高等にかかった消費税額
(売上高と仕入高にかかる消費税率は、通常であれば10%、軽減税率の対象の場合は8%です)

簡易課税方式による計算方法

簡易課税方式は課税売上高が5,000万円以下の場合にのみ適用できる計算方法で、計算式は以下の通りです。

◆納付消費税額 = 課税売上高に対する消費税額 -(課税仕入高等にかかった消費税額×見なし仕入率)

見なし仕入れ率とは以下の表の通り、売上に対する仕入の割合を業種ごとにおおかた定めたものです。

事業区分 該当事業 見なし仕入率
第1種事業 卸売業 90%
第2種事業 ・小売業
・農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業)
80%
第3種事業 ・製造業等
・農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)
・建築業
・製造業など
70%
第4種事業 飲食店業など 60%
第5種事業 ・運輸業
・通信業
・金融業
・保険業
・保険業
50%
第6種事業 不動産業 40%

参照:消費税のしくみ | 国税庁

個人事業主が納める消費税は、自らで計算して確定申告をする必要があります。

ただし、売上高が1,000万円を超える規模になると税理士を通して確定申告をしたり、法人化を検討したりすることも珍しくありません。

【個人事業主が納める主な税金まとめ】

税金の種類 計算および申告方法
所得税 ・年間の所得から経費および控除額を引き、所得額に応じた税率(5~45%)をかける
・自身で計算し、確定申告において申告する
個人住民税 ・原則として年間所得の10%
・確定申告の内容を基に自治体が計算し、通知が来る
個人事業税 ・年間所得が290万を超え、法定業種に該当する場合に納付する必要がある
・税率は業種によって3~5%
・確定申告の内容を基に自治体が計算し、通知が来る
個人事業税 ・開業から2年は免税
・所得が1,000万円を超えない事業主は免税
・前々年の所得を基に自身で計算し、確定申告時に申告する

個人事業主にできる3つの節税対策

個人事業主にできる3つの節税対策

個人事業主の税金は自らが申告する課税所得額によって決まります。

各種税金の計算基となる課税所得額は、売上から経費と控除を差し引いたものため、経費や控除を多く計上するほど所得額は下がり節税につながります。

また、最終的に確定申告を行う際には、節税効果の高い青色申告を選択することが重要です。

節税対策①経費を漏れなく計上する

経費を漏れなく計上することは、節税の基本と言えるでしょう。そのためには、経費として計上できるものを知っておくことが大切です。

以下の表では、代表的な経費の具体例を示しています。勘定科目とは、帳簿づけを行う際の分類項目のことです。

経費の勘定科目 内容
開業費 業準備にかかった費用
地代家賃 事業所の家賃、更新料など
水道光熱費 水道代、電気代、ガス代など
車両費 ガソリン代、高速代など
通信費 電話代、インターネット接続料、レンタルサーバー代、切手代、郵送料など
消耗品費 10万円未満のパソコン、文具など
研修費 業務に関する勉強会への参加費用など
会議費 会議・打ち合わせに伴う飲食代など
交際費 取引先へのお中元・お歳暮など
支払手数料 振込手数料、システム利用料など
租税公課 個人事業税、固定資産税などの税金
※所得税、住民税は対象外
雑費 どの勘定科目にも該当しないもの

ここでは代表的な勘定科目を紹介していますが、該当するものが無い場合は新たな勘定科目を設定して帳簿づけをしても問題ありません。使用する勘定科目は、業種によって大きく異なります。

自宅で事業を行う場合、地代家賃や水道光熱費は事業で使用する割合に応じて経費として計上することができます。

経費として計上するものについては、支払いをしたことが証明できる領収書やクレジットカードの利用明細書などの保管が義務付けられているので、開業準備の段階からそれらを保管する習慣をつけるようにしましょう。

節税対策②控除を活用する

経費と同様に、該当する控除をしっかりと申告することが節税につながります。以下の表は、所得控除の種類とそれぞれの控除を申告するための主な条件です。

控除の種類 主な条件
基礎控除 全員に適用される
配偶者控除 配偶者の年間所得が48万円以下
配偶者特別控除 配偶者の年間所得が48万円超~133万円以下
扶養控除 配偶者以外の扶養家族(16歳以上)の年間所得が48万円以下
障害者控除 本人・配偶者・扶養家族に障害がある
勤労学生控除 特定の学校に通い、勤労所得がある
寡婦(夫)控除 離婚後、婚姻をしていない
生命保険料控除 生命保険料を支払った
地震保険料控除 地震保険料を支払った
社会保険料控除 国民健康保険、国民年金を支払った
医療費控除 年間10万円以上の医療費を支払った
小規模企業共済等掛金控除 小規模企業共済等の掛金を支払った
寄付金控除 特定の団体などへの寄付、ふるさと納税など
雑損控除 盗難・災害などの損害を受けた

これらに該当する控除がある場合、忘れずに申告することが節税につながります。それぞれの所得控除を受けるための詳しい条件などは、以下のページを参考にしてください。

参照:所得金額から差し引かれる金額(所得控除) | 国税庁

節税対策③確定申告で青色申告を選択する

確定申告において個人事業主は、白色申告と青色申告のどちらかの方法を選択します。青色申告を選択するには、事前に「青色申告承認申請書届け出」を税務署に提出する必要があるので注意してください。

白色申告は簡易的な帳簿づけが認められており、開業当初の個人事業主にも取り組みやすい申告方法です。しかし、節税面を考慮するのであれば青色申告が有効です。青色申告をすることで、節税面において以下のようなメリットがあります。

  • 10万円~最大65万円の「青色申告特別控除」が受けられる(白色申告は0円)
  • 経費にできる幅が広がる(家族への給与など)
  • 赤字を最大3年間まで繰り越すことができる(翌年以降と相殺できる)

一方で青色申告を行うためには、日々の帳簿づけを複式簿記という複雑な形式で行う必要があるというデメリットも存在します。また、確定申告の際に提出する書類も多くなります。

しかし、専門の会計ソフトを利用することで、簿記の知識のない方でも青色申告をすることは可能です。次の項では、青色申告をするための手助けとなるおすすめの会計ソフトをご紹介します。

確定申告に役立つおすすめ会計ソフト3選

確定申告に役立つおすすめ会計ソフト3選

会計ソフトは、日常の帳簿づけの作業を軽減したり、帳簿の数字を決算書に自動で反映したりすることで、個人事業主の確定申告を手助けするものです。

特に青色申告を行う際には必須とも言えるものなので、早い機会に検討しましょう。

※本項で紹介するプランの内容や料金は2021年3月時点のものであり、今後変更される可能性もあります。詳細については、契約前にリンク先の公式サイトからご確認ください。

やよいの青色申告 オンライン



「やよいの青色申告オンライン」は、サポート内容が充実していることから開業初期の個人事業主にも心強い会計ソフトのクラウド版です。

初年度の費用が税込11,000円(2年目以降は税込22,000万円)のトータルプランでは、操作方法だけでなく、初めての帳簿づけで迷うことも多い仕訳についても相談できます。

また、操作方法や帳簿づけについて自身で調べながら行うという場合には、最初の1年間は無料(次年度は税込8,800円)で利用できるセルフプランも用意されています。

マネーフォワードクラウド確定申告



「マネーフォワードクラウド」は、操作性に優れたシンプルなつくりが特徴のクラウド型会計ソフトです。会員登録をするだけで、1ヶ月間無料で利用できるトライアル期間が設けられています。

もっともサポートが充実しているパーソナルプラスのプラン(年額税込39,336円)では電話相談も可能ですが、内容はクラウドソフトの操作方法に限定されています。

クラウド会計ソフトfreee



「freee」は、簿記の知識のない初心者でも質問に答えることでスムーズに確定申告を行えるように工夫されたクラウド型会計ソフトです。

もっともサポートが充実しているプレミアムプラン(年額税込43,780円)では、他の会計ソフトからの乗り換え代行や、万が一の税務調査の際のサポート補償にも対応しています。

確定申告の相談ができる窓口やサービス

確定申告の相談ができる窓口やサービス

開業初期は特に、会計ソフトを利用しても解決しないこともあるものです。個人で判断が難しいときには、以下で紹介する相談窓口の利用をおすすめします。

青色申告会

青色申告会は、青色申告を行う個人事業主やフリーランスを支援する団体です。入会することで、日々の帳簿づけや確定申告時の相談、サポートを受けることができます。

窓口は全国にあり、必要な会費や受けられるサービス内容が多少異なります。最寄りの青色申告会は、以下の公式ページからご確認ください。

参照:一般社団法人 全国青色申告会総連合

税理士ドットコム



税金の申告は専門家に任せたいという場合は、税理士に依頼することになります。しかし、どのように税理士を選べばよいか分からないという方も少なくないでしょう。

「税理士ドットコム」は、要望に応じて最適な税理士選びをサポートするサービスです。新規で税理士を探す場合だけでなく、現在の契約から変更したいというケースにも対応しています。紹介料は無料で、納得のいく税理士が見つかるまで何度でも相談可能です。

税務署の相談窓口

税務署では、確定申告の受付期間が近づくと電話による相談窓口を設けています。申告内容を認めるかどうかの最終判断を行うのは税務署です。一般的な事例から外れるケースや、調べても分からないことなどは申告前に税務署に相談しましょう。

所轄の税務署およびその電話番号は、以下のページから確認できます。

税務署の所在地などを知りたい方 | 国税庁

おわりに

自身の申告で納税額が決まる個人事業主にとって、税金を正しく理解し、適切な確定申告をすることはとても重要です。

経費として計上できるものは漏れなく計上し、活用できる控除についてもしっかりと申告しましょう。

また青色申告を選択することは大きな節税効果があります。専門の会計ソフトや専門家による相談窓口を活用しながら、ぜひ挑戦してみましょう。