個人事業主が法人カード(ビジネスカード)を持つメリットと選び方のポイント

法人カード(ビジネスカード)発行を検討している個人事業主の方へ。法人カードを持つことのメリットや、数あるカードからベストな法人カードを選ぶためのポイントなどをご紹介します。

個人事業主なら、クレジットカードには個人業主向けに発行されている法人カード(ビジネスカード)があることはご存知かと思いますが、

 「本当に法人カードは作った方がよいのか?」
 「独立してすぐに作れるのか?」
 「どこのクレジットカードを作るべきか?」

など、わからないことも多いことでしょう。

法人カードには、一般の個人カードにはないビジネスに特化したメリットが多数あるため、個人事業主なら是非とも作っておきたいものです。

そこで、個人事業主ためのクレジットカードについて詳しく解説していきます。法人カードのメリットから、会計処理の方法、審査について、選び方、おすすめのクレジットカードなど、法人カードに必要な情報をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

法人カードと個人カードの違い

法人カードと個人カードの違い

「法人」と名の付く法人カードですが、法人格のない個人事業主でも作成することができます。大企業向けのコーポレートカードから、中小企業・個人事業主向けのビジネスカードまで、法人カードは企業規模により種類が分かれています。

個人事業主でも作ることのできる法人カードは、個人カードとは異なる以下のような特徴があります。一般的な法人カードだけにある特徴と、個人カードと共通する特徴をご紹介します。

一般的な法人カードの特徴

カード利用枠(利用可能額)が大きい

カード利用枠とは、クレジットカードで立て替え払いができる最大金額、利用限度額のことです。一般的に個人カードより法人カードの方がカード利用枠は多く設定されています。

ビジネスに役立つサービスの充実

法人カードには、ビジネスを支援するための付帯サービスが充実しているものが多くあります。例を挙げると、国内外の旅行傷害保険の補償が充実していたり、国内外の空港ラウンジが利用できたり、無料の税理士相談が既定の回数受けられたりするサービスなどがあります。

年会費がかかる

個人カードでは、年会費無料のクレジットカードも多く存在しますが、法人カードでは稀です。年会費が有料に設定されている代わりに、個人カードと比較して充実したサービスや機能が付帯されています。

個人カードとも共通する法人カードの特徴

ポイントが貯まる

個人カードと同様に、法人カードも使った分だけポイントが貯まるものがあります。個人事業主の場合、税金・オフィスの水道光熱費・賃料・通信費等固定費など、比較的高額な支払いをカード払いにするだけで、効率的にポイントが溜まっていきます。

会計ソフトとの連動

多くのクラウド型の会計ソフトでは、銀行口座やクレジットカードの設定をすることで、自動で購入履歴を取得し、帳簿に反映することが可能です。会計ソフトとの連動は、会計事務の手間の大幅削減につながります。

資金繰り改善に役立つ

手元に現金がないが仕入れをしなければならない場面など、事業を継続していく上ではよくある事態です。クレジットカードの支払いは、購入日から1~2ヶ月先。その間支払いに猶予ができるため、資金繰りの改善に役立ちます。

個人事業主でも法人カード(ビジネスカード)を持つメリット

個人事業主でも法人カード(ビジネスカード)を持つメリット

ほとんどの法人カードは年会費がかかりますが、法人カードを持つことはそれ以上のメリットがあります。個人事業主が法人カードを持つ5つのメリットをご紹介します。

1. 事業支出とプライベートの支出が分けられる

法人カードとプライベート用のクレジットカードを分けて使用することで、消耗品・交際費などの雑然とした経費も、プライベート用かビジネス用かを明確に振り分けることができます。

2. 事業に使ったお金の流れを可視化できる

毎月のカードの明細書で、いつ・どこで・いくら経費を使用したのかが分かるため、経費の管理がしやすくなります。経費の計上漏れも防ぐことができます。また、確定申告の際の経費の証明にも使えます。さらに、クレジットカードと連携できる会計ソフトを使用すれば、会計処理が自動で行え、業務効率化にもつながります。

3. 急な出費に備えられる

一般的な個人カードよりも限度額が高く設定されている場合が多い法人カードなら、急な出費にも備えられます。せっかくのビジネスチャンスなのに資金が足りない事態や予期せぬトラブル時の出費にも対応ができます。

4. キャッシュフローが把握できる

カード決済にすることで、カード使用日から支払いまでに1~2ヶ月の猶予ができるため、キャッシュフローも把握しやすくなります。キャッシュフローの把握は、資金不足になっていないか的確に把握するために重要です。

5. ポイントがたまる

クレジットカードの多くには、利用金額に応じてポイントがたまるサービスがあります。たまったポイントは、請求金額の値引きや商品への交換などに使えます。事業支出は、個人の支出に比べて高額になることも多いでしょう。せっかく大きなお金を支払うのであれば、その分、ポイント還元が受けられるクレジットカード払いがお得といえます。

個人事業主クレジットカードを使用した場合の会計処理の方法

個人事業主クレジットカードを使用した場合の会計処理の方法

クレジットカードを使用した決済では、実際に購入や仕入れを行った日と、預かり金から代金が引き落とされる日が異なることになります。会計処理はどのようにすればよいのでしょうか。

一般的には会計処理も2段階で行います。具体的には次のような決済方法になります。

個人事業主が事業用の法人カードを使って決済する場合

確定申告で65万円の特別控除を受けるためには、青色申告で複式簿記形式にて記帳する必要があります。例えば、法人カードで1,000円の書籍を購入した場合の複式簿記形式による記帳の仕方は以下の通りです。

はじめに、「借方」に「新聞図書費」と費用を記帳。「貸方」には負債である「未払金」の勘定科目を使って記帳します。この1行で、「新聞図書費が1,000円増え、未払金が1,000円増えた」ことを表します。

次に、クレジットカードの引き落とし日に「借方」に負債である「未払金」を、「貸方」に資産である「普通預金」を記帳。この記載は「未払金が1,000円減り、普通預金が1,000円減った」ことを意味します。

個人事業主がプライベート用のクレジットカードを使って決済する場合

個人事業主がプライベート用のクレジットカードを使用して決済した場合は、会計処理の仕方が違います。

個人カードを使って書籍を購入した場合、「事業用の費用を事業主が立て替え払いした」ということになるため、負債である「事業主借」を用いて記帳します。この1行で「新聞図書費が1,000円増え、事業主から借りているお金が1,000円増えた」ことを表します。

尚、この場合はクレジットカード会社から引き落としがあった時点での処理は必要ありません。

法人カードの選び方のポイント

法人カードの選び方のポイント

法人カードといってもさまざまな種類がありそれぞれ特徴が異なります。では、実際に個人事業主が法人カードを作る場合、どのような特徴を持ったカードを選べばよいのでしょうか。法人カードの選び方のポイントをまとめました。

代表者の信用を重視!事業の実績が浅くても作れるカード

個人事業主もお申し込み対象としている法人カードでは、個人の信用情報を重視して審査する傾向があります。開業してからまだ日が浅くても、カードを申し込む個人事業主の信用情報に特別な問題がなければ、審査が通る可能性があります。

年会費が高すぎないカード

法人カードの多くは年会費があります。ビジネスに役立つ充実の付帯サービスがあるためです。しかし、いくら魅力的な特典があろうとも、年会費が高すぎては個人事業主にとって負担は大きくなってしまいます。収入とのバランスを考慮して選びましょう。

ポイント還元率の高いカード

法人カードの一般的なポイント還元率は0.5%程度です。一方で、特定のお店での利用はポイント5倍、海外で利用はポイント2倍など、ポイント還元率をさまざまな条件により増やすことができるカードもあります。カードを選ぶ際には必ずチェックしたい項目です。

カード利用枠(利用可能額)が大きいカード

カード利用枠(利用可能額)が大きいカードを選んでおけば、いざという時に役立ちます。初期投資や資金繰り改善、設備投資など、高額な費用が必要になる場合を想定しておくとよいでしょう。

ビジネス向けの嬉しいサービスが付いているカード

法人カードには、国内や海外の空港にある専用ラウンジを利用できたり、ETCカードが無料で発行できたり、経理サポートや弁護士相談サービスのあるものなど、ビジネスを行う上でうれしいサービスが各社用意されています。自身の事業に合ったサービスが付帯しているか、カードを選ぶ際にはチェックしましょう。

個人事業主が法人カードの審査に通りやすくなるポイント

個人事業主が法人カードの審査に通りやすくなるポイント

個人カードの審査の場合、一般の会社員と比較して収入が不安定な個人事業主は、月収が高くても通りづらいという現実があります。一方、法人カードならば、行っている事業の信頼性に審査の重点が置かれます。

そのため事業の状態によっては審査を通過できる可能性が高くはなります。それでも、資本力のない個人事業主は貸し倒れのリスクが大きいため、カード会社も慎重に審査を行います。

法人カードの審査基準は公開されていませんが、重視されるのは、設立年数と業績と言われています。では、法人カードの審査に通りやすくなるポイントについてみていきましょう。

開業届を提出する

税務署に開業届を提出していない個人事業主も意外に多いものです。税法上、税務署に屋号を届出する開業届を必要があり、これにより正式に個人事業主として認められます。個人事業には法人とは異なり登記制度がないため、開業届の提出によって社会的な信用が増すのです。

安定した収入を証明する

会社員とは異なり、個人事業主には給与明細がありません。そのため、場合によっては法人カードの審査に納税証明書などの書類を提出する必要があります。安定した収入があることを証明できるよう、確定申告書の写しや納税証明書などをきちんと準備しておくとよいでしょう。

支払いの延滞をしない

法人の信用のみで審査する法人カードもありますが、個人与信で審査し発行できる法人カードもあります。その場合、今までの個人でのクレジットカードの利用状況も重要な審査基準となるため、普段から延滞しないよう支払いには注意するようにしましょう。

個人事業主におすすめの法人カード(ビジネスカード)5選

個人事業主におすすめのビジネスカード5選をご紹介していきます。

カード名 年会費 ポイント還元率 旅行傷害保険 ショッピング保険
セゾンプラチナ・ビジネス・
アメリカン・エキスプレス・カード
22,000円(税込) 0.5%~1.0% 海外:最高1億円
国内:最高5,000万円
海外:-
国内:-
アメリカン・エキスプレス・
ビジネス・カード
初年度無料
2年目以降
13,200円(税込)
0.50% 海外:最高5,000万円
国内:最高5,000万円
海外:500万円
国内:500万円
JCB CARD Biz一般 初年度無料
2年目以降1,375円(税込)
0.50% 海外:最高3,000万円
国内:最高3,000万円
海外:100万円
国内:-
三井住友ビジネスカード
for Owners
初年度無料
2年目以降1,375円(税込)
0.55%〜2.75% 海外:最高2,000万円
国内:なし
海外:100万円
国内:-
楽天ビジネスカード 2,200円(税込)
(ただし、プレミアムカード入会必須:
年会費11,000円)
1.0%〜5.0% なし 海外:-
国内:-

セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード

セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードは、ビジネスのためのサービスが充実したクレジットカードです。資金繰りの改善を考えたとき、10日締め翌月4日払いの55日間の支払い猶予期間があるため、キャッシュフロー改善に役立ちます。

一般的には受け取ったポイントは有効期限が設定されていますが、セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードのポイントは消滅しません。ポイントの有効期限を気にする必要がなく、安心してポイントを貯められます。

また、海外1,300か所以上の空港ラウンジを利用できるプライオリティ・パスに無料で登録できたり、高額な海外旅行傷害保険、コンシェルジュサービスの利用などの魅力的なサービスが満載。22,000円の年会費も、年間200万円以上の利用があれば11,000円になるため、コスパの良いカードといえるでしょう。

比較的審査も甘く、登記簿謄本や決算書の提出は不要です。起業後間もない個人事業主や企業であっても審査に通過できる確率の高いビジネスカードです。

アメリカン・エキスプレス・ビジネス・カード

ステータス性の高い法人カードとして、アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードが多く利用されていますが、アメックスの法人カードには一般カードが存在します。

これがアメリカン・エキスプレス・ビジネス・カード(グリーン)です。アメックス・ビジネス・グリーンとも呼ばれます。法人・個人事業主に向けたさまざまなビジネスサポートが魅力です。

出張時に便利なマイルへのポイント移行ができたり、空港ラウンジはカード会員と同伴者1名も無料で利用可能です。嬉しいコンサートやスポーツ観戦の先行予約権(チケット・アクセス)も用意されています。

別途利用料金は掛かりますが、クラウド会計ソフト「freee」と連携も可能なため、カード利用情報を自動で収集可能です。経費入力の時間が節約できるのは忙しい個人事業主にとって非常に有用です。

JCB CARD Biz一般

JCB CARD Bizは個人カード感覚で使える、個人事業主・中小企業向けのクレジットカードです。毎月の経費や出張費の支払いでポイントが貯まることはもちろん、JCB優待店での使用なら、ポイント最大10倍に。貯まったポイントは1ポイント=3マイルへの移行も可能です。

ビジネスで必要な宿泊や移動に便利なサービスも充実しています。国内出張のためのJR東海「エクスプレス予約」サービスでは新幹線予約ができるため、チケットレスで乗車ができます。

申し込み時の法人の本人確認書類は不要。インターネット上で簡単に申し込める点もメリットのひとつです。年会費は初年度無料で、2年目以降は1,375円(税込)と同レベルのカードと比較して維持コストも安いこともおすすめする理由です。

三井住友ビジネスカード for Owners クラシック

三井住友ビジネスカード for Ownersクラシックは、個人事業主や中小企業向けのビジネスカードです。初年度無料、2年目以降1,375円の年会費で、設立間もない個人事業主でも登記簿や決算書不要で申し込むことができます。事業を始めたばかりや資金繰りが気になる個人事業主は、検討に値するカードといえるでしょう。

一括払いのみ対応のビジネスカードもありますが、三井住友ビジネスカード for Ownersなら一括払いに加えて、分割払い・リボ払い・2回払い・ボーナス一括払いが選択でき便利です。

上位カードとして、ゴールド(年会費11,000円)、プラチナ(年会費55,000円)もあります。

楽天ビジネスカード

楽天カードの中で法人向けに作られているのが楽天ビジネスカードです。ビジネスシーンで利用できる特典が付帯されていて、ETCカードを複数枚発行できたり、ビジネスに特化した豊富なサービスが受けられます。

楽天経済圏を積極的に利用することでポイントがどんどん貯まるのが、楽天ビジネスカード最大のメリットです。出張で楽天トラベルを利用したり、仕事で必要な物の購入は楽天市場を利用したりすれば、金額の5%が還元されます。通常のポイント還元は1%。楽天ビジネスカードではその5倍ですから、楽天のサービスをよく利用される方にはおすすめの法人カードといえるでしょう。

楽天ビジネスカードの年会費は2,200円ですが、楽天プレミアムカードへの入会が必須です。楽天プレミアムカードの年会費は11,000円ですから、実質13,200円の年会費が必要となるのでご注意ください。

おわりに

個人事業主にとって、法人カード(ビジネスカード)はあると便利です。事業関係の支出は、すべてクレジットカードで決算するようにすれば、経費を管理することも容易です。会計ソフトに紐付けすれば、会計処理の手間も省けます。業務の効率化はもちろん貯まったポイントで経費削減にもつながる法人カード、おすすめです。