青色申告の個人事業主がクレジットカード払いをした際の仕訳方法について

クレジットカード決済は利用明細で記帳できる、会計ソフトと連動できるといったメリットが沢山あります。

本記事では、個人事業主がクレジットカードで支払をした場合の仕訳方法や、法人カードのメリットについて解説していきます。

クレジットカード決済は仕訳方法がよくわからず利用に踏み切れない、あるいはただでさえ煩雑な毎月の経費処理が、これ以上複雑になっては困る!と考えて利用に踏み切れない人も多いではないでしょうか。

本記事で仕訳方法やメリットについて確認をしていきましょう。

事業用の経費は法人カード(ビジネスカード)で決済した方がいい?

事業用の経費は法人カード(ビジネスカード)で決済した方がいい?

仕訳について解説する前に、事業で使うクレジットカードは「法人カード(ビジネスカード)」の方が良いのか?という点について触れておきましょう。ポイントは次の2点です。

● 個人用(プライベート)カードと事業用カードは分けた方が良い
● 事業用のカードは必ずしも法人カードである必要はない

まず個人用のカードと事業用のカードは分けるのがベストです。クレジットカードの利用明細を使って、仕訳をしていくからです。もし1枚のカードにプライベート利用と事業利用とが混在していると、明細をひとつずつ確認しないといけません。

プライベート用と事業用とでクレジットカードを分けていれば、事業用カードの利用明細をまとめて記録するだけで記帳が完了するのです。

事業用カードは、「法人カードでなければならない」という決まりはありません。個人向けカードを2種類作り、一方をプライベート用に・もう一方を事業用に、と決めてつかうことも可能です。

ただし事業に使うのであれば、法人カードがおすすめ。法人カードには個人カードのメリットにくわえ、法人ならではの嬉しいサービスが付帯しているからです。

まずは個人カード・法人カードに共通のメリットから見てみましょう。

クレジットカード決済のメリット(個人・法人共通)

クレジットカードで経費を決済するメリットは次の4つです。

● お金の流れが見えやすい
● 会計ソフトと連動でき、記帳が楽になる
● 資金繰りに余裕ができる
● ポイントが貯まる

事業用経費をクレジットカードで支払うと、利用明細ですぐに利用履歴や内訳がわかります。現金決済につきまとうレシートの保管や手元現金との照合といった作業から解放されるのです。

また多くの会計ソフトはクレジットカードと連動させることができ、利用履歴を自動取得してくれますから、年末に大量のレシートを1枚1枚記帳することはなくなります。

またクレジットカード決済は資金繰りにも役立ちます。手元のキャッシュに余裕がないときでも、クレジットカード決済なら支払を1~2か月先にすることができるため、その間に資金繰りの改善の時間が作れます。

法人カード(ビジネスカード)決済のメリット

法人カードには、個人カードのメリットに加えて次の利点があります。

● カード利用枠(利用限度額)が大きめ
● ビジネス向けの特典が付帯している

法人カードは事業利用を想定しているため、個人カードより利用限度額が大きいことがほとんどです。

例、「三井住友ビジネスカード for Owners」の利用限度額
・クラシックカード 最大150万円
・ゴールドカード 最大300万円
・プラチナカード 最大500万円

高価な機材の購入やここぞというときの広告費など、使いたい金額が大きくなりがちな場合でも安心ですね。

また法人カードにはビジネス向け特典が付帯しています。先にご紹介した「三井住友ビジネスカード for Owners」の場合、法人会員限定で「ETCカードの複数枚発行」「航空券のチケットレス発券」「全国主要空港のラウンジ無料利用(ゴールド/プラチナのみ)」といったサービスが利用できるのです。

申し込みの際も登記簿謄本や決算書は不要で、審査されるのは個人の与信のみ。創業1年未満でも発行できますので、ぜひ検討してみてください。

そもそも「仕訳」とは何?

そもそも「仕訳」とは何?

ここからは「クレジットカードで経費決済をしたときの仕訳方法」についてみていきましょう。まずは「仕訳」のおさらいから始めます。

会計帳簿には「日記帳」「仕訳帳」「総勘定元帳」の3種類があります。このうち日々の取引を日付順に記載するのが「仕訳帳」です。仕訳帳は左右に分けて記入する構造になっており、左側を「借方(かりかた)」、右側を「貸方(かしかた)」と呼びます。

そしてすべての取引を「勘定科目」と呼ばれる整理ラベルに基づいて分類し、借方・貸方それぞれに記入していく、この作業が「仕訳」です。

クレジットカード決済で帳簿に記載する勘定科目は?

クレジットカードで支払った経費を記帳するときに使う勘定科目は、主に次の3種類です。

● 未払金
● 事業主借
● 事業主貸

それぞれが何を指すのか、みてみましょう。なお、次の項目では具体例をつかって仕訳の仕方を詳しく解説していますので、合わせて確認してみてください。

勘定科目「未払金」を使うのはこんな時!

「未払金」とは、クレジットカードで事業用の物品を購入したときや、経費の支払がまだ完了していないときに使う勘定科目です。

飲食店が食材を・小売店が商品を…、など「販売することを目的に仕入れた」ときは、商品代金をまだ支払っていなくても、勘定科目は「買掛金」を使います。

勘定科目「事業主借」「事業主貸」を使うのはこんな時!

「事業主借」「事業主貸」はいずれも個人事業主専用の勘定科目で、事業と個人(プライベート資金)とのあいだのお金のやりとりを記録する際に使います。

個人事業主だと、事業用の口座から個人用の生活費を引き出すこともありますよね。使っているのは同一人物とはいえ、仕訳帳に記録する際はきちんと分けなければいけません。

「事業主借」は個人のお金を事業に使ったときに、「事業主貸」は事業のお金を個人用に使ったときにそれぞれ使う勘定科目です。
「事業主」を「プライベート」と読み替え、「プライベートから借りた=事業主借」、「プライベートに貸した=事業主貸」と覚えるとわかりやすいですよ。

青色申告者がクレジットカード決済をした場合の記帳方法

では具体例とともに、実際にクレジットカードで決済をした際の仕訳方法を見ていきます。

注意!青色申告(65万円控除)のクレジットカード決済は「発生主義」方式

個人事業主が確定申告をする際は、「白色申告」、「青色申告(10万円控除)」、「青色申告(65万円控除)」などが利用できます。このうち「青色申告(65万円控除)」の場合は、原則的に複式簿記で記帳しなければなりません。

複式簿記では「発生主義」、つまり収入や支出が発生した段階で計上(記帳)することがルールです。商取引成立と実際の入金や支払にタイムラグがある場合は、その都度記帳が必要ということです。

クレジットカード決済を発生主義で記帳する具体例

実際の記帳例をご紹介しましょう。

使うクレジットカードが個人用か法人用(事業用)かによって、記帳のタイミングや仕訳で使う勘定科目が異なるので、注意しながら読んでみてください。

事業用カードで事業経費を支払ったとき

例、2020年8月10日(火)
  打ち合わせに使うWEBカメラ(5,000円)を、事業用カードで購入した。
  2020年9月27日(月)
  クレジットカードの利用料金が事業用口座から引き落とされた。

事業用カードで事業経費を支払ったときは、「購入した日」と「利用料金が引き落とされた日」の2回、記帳する必要があります。クレジットカードで購入した時点ではまだ代金の支払が完了していないため、「未払金」という扱いになります。代金が口座から引き落とされた日に、該当の「未払金」を「普通預金」の勘定項目で相殺します。

商品を購入した日の仕訳

借方 貸方
取引日 勘定科目 金額 勘定科目 金額
2021年8月10日(火) 消耗品 5,000 未払金 5,000

利用料金引き落とし日の仕訳

借方 貸方
取引日 勘定科目 金額 勘定科目 金額
2021年9月27日(月) 未払い金 5,000 普通預金 5,000

事業用カードでプライベートの支払いをしたとき

例、2020年8月10日(火)
  ばったり会った友人と食事をした代金(8,000円)を事業用カードで支払った。
  2020年9月27日(月)
  クレジットカードの利用料金が事業用口座から引き落とされた。

事業用カードでプライベートな支払をしたときは、「未払金」でははく「事業主貸」を使います。利用料金が引き落とされた日に事業主に貸した、という解釈をするということです。記帳は利用料金引き落とし日の1回だけでよく、実際に支払いを行った日は記録しません。

■ 食事をした日の仕訳
記帳なし

利用料金引き落とし日の仕訳

借方 貸方
取引日 勘定科目 金額 勘定科目 金額
2021年9月27日(月) 事業主貸 8,000 普通預金 8,000

個人用カードで事業経費を支払ったとき

例、2020年8月10日(火)
  旅行先で見つけた事業用の書籍(2,000円)を個人用カードで支払った。
  2020年9月27日(月)
  クレジットカードの利用料金がプライベート口座から引き落とされた。

個人用のクレジットカードで事業経費の支払いを行ったときは、「事業主借」の勘定科目を使います。事業経費のお金を事業主から借りた、ということになるためです。
利用料金の引き落としは事業と無関係なプライベート口座から行われるため、記帳は不要です。実際に支払をした日の1回だけ記録してください。

書籍を購入した日の仕訳

借方 貸方
取引日 勘定科目 金額 勘定科目 金額
2021年8月10日(火) 事業主貸 2,000 普通預金 2,000

■ 利用料金引き落とし日の仕訳
記帳なし

クレジットカード支払を仕訳する際の例外

事業用カードで支払をするたびに2回記帳するのは面倒ですよね。実は事業用カードで経費を支払う際は、利用料金の引き落とし日に1回だけ記帳すればOK、という例外があります。先ほどの「WEBカメラを購入した」例ですと、以下のような記帳でOKです。

事業用カードで打ち合わせ用WEBカメラ(5,000円)を購入

借方 貸方
取引日 勘定科目 金額 勘定科目 金額
2021年9月27日(月) 消耗品 5,000 普通預金 5,000

※ 年末に購入し、引き落としは年をまたぐといった場合は、はじめに書いたように「未払金」勘定科目を使い、購入日・引き落とし日の2回記帳が必要です。

青色申告を行う際の記帳時の注意点

青色申告を行う際の記帳時の注意点

クレジットカード決済の記帳時、青色申告をする個人事業主がとくに注意しないといけない点が4つあります。

● 「クレジットカード利用明細書」が領収書の代わりになる!
● 分割払いにかかる手数料の処理には「支払手数料」を使う!
● ポイントやマイルで支払ったときは処理不要!商品券やキャッシュバックがあったときは「雑収入」
● 「紙での保管」が基本、Web明細はダウンロード&印刷を!

それぞれ詳しく見ていきましょう。

「クレジットカード利用明細書」が領収書の代わりになる!

クレジットカードで支払った場合、実際の代金の支払はまだ完了していませんから「領収書」は発行されません。領収書とは店舗が代金を受け取ったことを証明する書類なので、カード会社が仲介する信用取引であるクレジットカード決済では、店舗は領収書を発行する義務がないのです。頼むと発行してくれる店舗もありますが、よく見ると「クレジットカードにてお支払い」といった記載があり、税法上の領収書としては機能しません。

ではクレジットカード決済の場合、何が領収書の代わりになるかというと「利用明細書」です。この場合の利用明細書は店舗が発行するものでも、カード会社が後日発行するものでも構いません。大切に保管しておきましょう。

なお、領収書代わりになる利用明細書には「店舗名」「購入した商品やサービス内容」「購入金額」「購入日」が揃っていることが条件となります。

領収書代わりのWeb明細はダウンロードして紙に出力

近頃はクレジットカードの利用明細を「紙で郵送」ではなく、Web上で確認できるサービスを勧めるカード会社も増えてきました。「紙の明細を郵送」してもらうには追加料金がかかる場合もあり、Web明細を選択しているという人も多いでしょう。

ただし国税庁は「確定申告に関する書類は『紙で』『7年間』保管すること」を義務付けています。したがってWeb明細を利用している場合は、印刷して保管するという作業が必要です。

Web明細のダウンロード期限を数ヶ月程度に制限しているカード会社もあるので、こまめにダウンロード・印刷しておく癖をつけましょう。

分割払いにかかる手数料の処理には「支払手数料」を使う!

クレジットカードで分割払いをし、支払手数料がかかったというケースもあるでしょう。勘定科目には「支払手数料」という項目がありますので、分割払いの手数料もこれを使います。

ちなみに勘定科目「支払手数料」は分割手数料のほか、銀行・郵便局など金融機関で振り込みをした際にかかる手数料や、弁護士・税理士といった専門職への報酬にも使えます。

ポイントやマイルで支払ったときは処理不要!商品券やキャッシュバックは「雑収入」

貯まったポイントやマイルで支払いをすることもあります。その場合の記帳は不要です。

ただしポイントやマイルを商品券やキャッシュバックと交換した場合は、得た金額を勘定科目「雑収入」で記帳します。

確定申告(青色申告)を簡単に行うなら「freee会計」

65万円の控除が受けられる青色申告をしたいけれど、帳簿の作成や確定申告が煩雑そうで躊躇しているという人も少なくありません。

そんなときにおすすめしたいのが、無料で使える会計ソフト「freee会計」。確定申告は初めて、帳簿のつけ方の知識ゼロという人でも、「信じられないほど簡単に確定申告書類ができた」と評判のソフトです。

おすすめポイント① 会計ソフトを買う必要なし!クラウドだからすぐに始められる

freee会計はすべてのデータをクラウドで管理しています。わざわざ会計ソフトを購入しなくても、会員登録すればすぐに使い始められる手軽さが魅力です。

スマホにアプリをインストールすれば、支払をしたその場で仕訳を登録可能。ついついレシートをため込んでしまう……、という人もこれならコツコツと記帳が続けられそうですね。

おすすめポイント② 銀行口座もクレジットカードも同期OK!明細を自動取得できる

おすすめポイント② 銀行口座もクレジットカードも同期OK!明細を自動取得できる

freee会計は国内ほとんどの金融機関口座やクレジットカードに同期対応しています。口座の入出金やカードの利用明細を自動で取得してくれるのです。法人カードを作成し同期しておけば、経費の記帳がほぼすべて自動で進んでいくようになります。

取得の際は日付や金額に加え、推測される勘定科目まで表示してくれるという親切さ!「勘定科目をどれにしたらいいか、いつも迷ってしまう」という会計科初心者の方にも嬉しい設計です。

おすすめポイント③ 簿記知識ゼロでも大丈夫!カンタン入力で記帳完了

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freee会計は「初めての人でも簡単に、ミスなく使える」ことを目指しているだけあって、日々の記帳も家計簿感覚でサクサク進みます。「いつ」「どこで」「何に使ったか」が分かれば、画面に従って入力していくだけ。

「貸方」「借方」といった複式簿記の知識がなくても、freeeが自動で複式簿記にしてくれるので安心です!

おすすめポイント④ 面倒な税金計算も質問に「○×」で答えるだけ!

おすすめポイント④ 面倒な税金計算も質問に「○×」で答えるだけ!

確定申告の際は医療費や納税、住宅ローン、ふるさと納税などさまざまな控除が受けられます。お得なのはわかっていても、すべて自分で調べ計算するのはちょっと面倒ですよね。

freee会計は「○」と「×」で質問に答えるだけで、必要な計算を自動でやってくれるため、控除申告のし忘れもありません。

おすすめポイント⑤ 個人事業主の確定申告用なら「ミニマムプラン」で十分使える!

freee会計ははじめの30日間は無料体験が可能、その後は月額1,980円の「ミニマムプラン」から月額39,800円の「プロフェッショナルプラン」まで3つの有料プランに移行します。

個人事業主が青色申告に利用するなら、月額1,980円の「ミニマムプラン」で十分!日々の記帳が楽になり自動で複式簿記が作成され、申告書類まで印刷できます。

もちろん、この利用料も「通信費」として経費計上してOKです。

おわりに

個人事業主の経費決済は、法人カード払いにすると記帳の効率がグンとアップします。法人カードを利用すると事業用だけの利用明細が容易に取得でき、また会計ソフトと連動させると自動で仕訳を進めてくれるからです。さらに利用限度額が大きい法人カードは、事業を大きくしたい、投資をしたいといった場面でも頼りになる存在です。

会計処理を効率化し、売上を上げることにより時間を使いたい個人事業主の方は、ぜひ法人カードの利用を検討してみてください。