【2021年度版】個人事業主の確定申告初めてガイド~手続きの流れ編~

働き方改革などの政府の施策や社会環境の変化により、会社を退職後、独立し、事業を行う方、フリーランスで起業する方が増えています。一定の所得のある個人事業主は、確定申告をする義務があります。

では、確定申告には、一体どんな手続きが必要になるのでしょうか。

今回は、初めて確定申告を行う方や、何度か確定申告を行った方にもおすすめする、確定申告を効率的に行うための流れについて解説します。

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個人事業主が確定申告の手続き前に必要な準備

個人事業主が確定申告の手続き前に必要な準備

個人事業主の確定申告には2種類の申告方法があります。

1つ目は白色申告、2つ目は青色申告です。白色申告は何も届け出をしなくても誰でも平等に10万円の控除が受けられる申告方法です。青色申告は最低でも10万円、さらに青色申告特別控除を受けることでさらに55万円、合計65万円の控除が受けられる申告方法です。

青色申告承認申請書は、適用を受けようとする申告年度の申告期限である3月15日までに提出します。例えば、令和2年度の申告で適用したいのであれば、令和3年3月15日までに提出します。
 
また併せて別の申請を提出し要件を満たせば更に特典を受けられます。それが青色申告特別控除です。この控除は、e-Taxで電子申告をしていれば誰でも控除が適用できます。そのほか青色事業専従者給与、貸倒引当金、純損失の繰り越しと繰り戻しの適用があります。

青色事業専従者給与は、白色申告の場合親族に支給した給与を経費と認めるには上限があります。しかし、青色事業専従者給与の届け出を提出すれば給与として支給した全額を経費として計上できます。
 
青色申告承認申請書を提出したうえで、これから紹介する電子申告の方法を活用すれば65万円控除を受けられます。

必要な書類・環境を整える

確定申告をスムーズに始めるには、まず準備が必要です。必要な書類、環境を事前に整えておくことで、簡単に確定申告を完了できます。

早速、必要な書類や環境についてポイントをご紹介します。

1.事業収入の管理をしておく
個人事業主の場合、まず事業収入の管理がポイントです。確定申告で申告書の第一表の事業所得に記載するためのスタートラインが事業収入の管理です。

この事業収入から経費をマイナスしていくことで所得が把握できます。事業収入は売上台帳を作成すれば申告の時の売上高を記載するだけで済むので簡単です。

2.領収書を整理しておく(事業に関するもの・医療費など個人に関するもの)
個人事業主にとって、領収書は必須です。自家消費を意味する「家事費」と事業にかかる出費をさす「経費」は厳密に区別しなければなりません。事前にレシートや領収書に「事業用の何に使用したものか」をメモしながら管理するのも、のちの整理を楽にする方法です。
 
また、管理方法の提案として「領収書をスクラップブック等に添付して保管する」という方法もあります。経費が多く領収書が多くあるという場合は家計簿をつけるように、スクラップブックに貼って紛失を防ぐ、貼るときにメモを書くという習慣をつけるのも大切です。

税務調査があったときに、経費の領収書をどのように管理しているのか、というところもチェックされます。この時にスクラップブックを見せることで「しっかり管理ができている」という印象を調査官に与えられます。

支払請求書と売上請求書はそれぞれファイリングし、月ごとに管理ができると通知漏れ、回収漏れを防ぐのに役立ちます。

3.不明なものは後から確認できるようにまとめておく
不明なものは、メモ書きを残しひとまとめにしておきます。確定申告期間中に税理士が税務相談に乗ってくれるタイミングがあるのでその時に相談できるようにまとめておきましょう。また、時間がたつと記憶があいまいになるので、メモ書きはできるだけ詳しく記載しておきます。

4.マイナンバーを確認しておく(e-Taxで電子申告する場合はマイナンバーカード)
申告書にはマイナンバーの記載が必要です。カードリーダーとマイナンバーカードさえあれば、オンラインで申告を完了できるため、マイナンバーカードの取得をおすすめします。

もし、マイナンバー自体が分からないという場合は、住民票を取得すれば、その住民票に記載がされているマイナンバーを確認できます。これらの方法を確定申告の申告期間に入ってから準備していたのでは、発行までの時間や混雑が予測されますので前もって準備するのがよいでしょう。

5.ネット環境の整備をしておく(e-Taxで自分のパソコンから申告する場合)
自分でオンライン申告を完結される場合には、e-Taxが利用できる環境になっているか(Windowsのバージョンなど)事前に確認しておくことをおすすめします。

いざ申告となったときに、バージョンが対応しておらず使用できなかったとなると、そこから再度準備をしなければならないケースも発生します。申告の段取りが活かされないことにもなりかねませんので早めの確認をしましょう。

帳簿を整理する

個人事業主が確定申告をする場合、事業所得を計算するため決算書を添付しなければなりません。この決算書を作成するためには日々の帳簿を整理しておく必要があります。帳簿整理の方法は次のようになります。

1.会計ソフトを利用しない場合
経費ノート作成・現金出納帳作成・預金通帳の管理を行う必要があります。

会計ソフトを利用しない場合は、確定申告の時に添付する損益計算書が必要です。これを簡単に作成するには、毎月集計しておく必要があります。

現金は現金出納帳で個人のお金と事業のお金を厳密に分ける、預金通帳も事業用に口座を作成し個人の口座と分けておく、経費も仕入れ、交通費や修理代などと分けて管理をしておくことが必要です。

取引量が多ければ多いほど、都度管理しなければ申告の時に時間がかかってしまい正しい申告書が作成できない要因となるので小まめに集計を行うことが大切です。

2.会計ソフトを利用する場合
機能をフル活用することで、現金出納帳や売上台帳などを作成する必要がなくなります。会計ソフトは現金出納帳の印刷、売上高を総勘定元帳で印刷、経費も毎月入力すれば自動で集計してくれます。

そのため、手書きで管理するよりも間違いなく後から見直してもすぐにわかりやすく見やすいです。また会計ソフトには追加で申告用のソフトを購入することで、ソフトの数字をそのまま連携して軽々申告書が作れるものがほとんどです。

ただし、会計ソフトを利用する場合でも、入力した証拠書類として領収書の整理、請求書の管理はしっかりしておきましょう。

確定申告書類を作成する

確定申告書類を作成する

確定申告書類を作成する方法は大きく分けて2つあります。1つは手書きで作成する方法、もう1つはe-Taxを利用して作成する方法です。

e-Taxを利用して作成した場合でも、その後マイナンバーカードとカードリーダーがあれば電子申告できますが、これらがない場合は印刷し税務署へ郵送する必要があります。

また、確定申告時期に国税庁のホームページに設置される確定申告書等作成コーナーでも確定申告書類の作成が可能です。この場合、自宅にネット環境がないといった人たちが申告に必要な書類を持って会場にあるe-Taxで申告します。
※国税庁 確定申告書等作成コーナー:https://www.keisan.nta.go.jp/kyoutu/ky/sm/top#bsctrl

期間中に開設される税務相談コーナーでは、税務相談の内容は受け付けてもらえますが実際に計算したり申告者に代わって申告書を作成したりという行為は行いません。申告する人に代わり申告書を作成するには「税務代理権限証書」というものが必要であり、代理で申告書の作成を請け負える人は税理士だけです。

税理士以外の人がこの税務代理権限証書なしに本人に代わり申告することはできないので注意が必要です。そのためにも、相談することは的確にまとめ、計算ミスを防ぐためにできるだけオンラインでの申告をおすすめします。

手書きで作成する

確定申告書を手書きで作成する場合、「申告書A」と「申告書B」の2種類に分かれています。

事業所得がある個人事業主の場合は「申告書B」で作成します。所得が赤字の場合、また前年からの繰越損失がある場合は第四表(損失の申告書)を合わせて提出します。

確定申告書に記載するものは、損益計算書をすべて作り終えた後の数字を転記するイメージです。確定申告書の第一表で売上高や経費を記載することはしません。

また、事業所得の記載のほか、医療費控除やそのほかの所得控除を受けるときに第一表に記載をして計算します。計算方法の手順は、字が非常に小さいですが付されている番号順に計算すると是額の計算までできるようになっています。

確定申告書等作成コーナーを利用する

誰もがパソコンやネット環境が整っているとは限りません。また単純に操作方法が分からないという人もいるのではないでしょうか。そんな時は、確定申告書等作成コーナーを利用してください。

確定申告時期になると税務署や近隣の公共施設に臨時の確定申告書等作成コーナーが設置されます。開設期間は決まっていますが、簡単な操作方法であればそこで質問をしながら申告することができます。

ここで注意が必要なのは、確定申告書作成コーナーで申告の質問を受け付けるのは入力の操作方法で、税務的な内容の相談は受けてもらえません。申告内容に疑問がある場合は、別の場所で受け付けている相談コーナーにいきます。

アプリやソフトを使う

最近はスマホアプリも充実しており、簡単に申告ができます。それぞれの方法について紹介します。

①スマホアプリの利用「スマホでe-Tax」
国税庁のホームページからアクセスできるe-Taxのスマホ版サイトです。申告者の氏名やマイナンバー、事前準備でまとめた事業所得などを記載することで簡単に申告できます。

ただし、利用している会計ソフトによってはスマホへデータの移行がスムーズにいかないこともあります。スマホでe-Taxはだれでも手軽に申告できますが、数字は自分で打ち込まなければいけないイメージを持っておくのがよいでしょう。

②会計ソフトの活用
国税庁のホームページから申告できるe-Taxが最もメジャーな方法です。家電量販店等で販売されているソフトやクラウドソフト(弥生の青色申告、クラウド会計freeeなど)での申告も便利です。しかし、これらの会計ソフトも、オンラインで申告する場合は国税庁のe-Taxのシステムを最終的に利用しています。

国税庁のホームページから集計している事業所得等の数字を直接入力すれば、簡単に申告業務ができます。事前に集計していなければオンライン上で事業所得の計算はできないのでやはり準備が必要です。

しかし、売上規模が小さい場合や、売上高が多くてもあまり経費が発生しないといった場合はそのままe-Taxを利用すれば十分です。逆に帳簿処理で会計ソフトを利用している場合であれば、同じ会社から出されている申告ソフトを利用するのがおすすめです。

例えば、会計帳簿を弥生会計で処理しているという場合は弥生の青色申告を、クラウド会計freeeを利用している場合はその申告ソフトを利用す

確定申告書を提出する

確定申告書の提出方法は大きく分けて2種類です。

1つは電子申告で提出する方法、もう1つは印刷した申告書を提出する方法(手書きの場合は、手書きの申告書)です。

電子申告は、マイナンバーカードとカードリーダーがあれば完了します。控えは印刷できます。作成した確定申告書を保存し、申告が完了すれば「メール詳細」といわれるものが印刷できます。

紙で提出する場合は、提出先の税務署が記載された宛名が一緒に印刷できるので封書で送ります。その際、控えを送り返してもらえるように、返信用の封筒に切手を貼って同封します。返信用封筒を同封しなければ控えが郵送されてきませんので、注意してください。

オンラインで申告した場合は、申告処理の進捗具合が確認できます。例えば申告書を作成し税額を計算した結果、還付が発生しているという場合にはその還付手続きがどの程度進んでいるのかも確認できるようになっています。

この機能を利用することで、還付金を資金繰りの一部として役立てる計画をたてられます。また、オンラインの方が税務署へ申告書を提出するよりも還付処理のスピードは速くなるというメリットがあります。

確定申告は、オンラインでも郵送でも申告することが最も重要ですが、その後の処理スピードの違いを考えるとオンラインの方が納税者には有利です。

納税する

申告期限と納付期限は同じです。令和2年分の申告期限は令和3年3月15日です。ただし、口座を登録することで振替納税を利用することができます。振替納税とは申告の時に引き落とし口座を申告しておくことで、自分の口座から1か月先の4月15日に引き落としされるよう設定できるシステムです。

納付額が多額で3月15日納付は難しくても4月15日であれば納付できるという場合であれば、振替納税を利用することで期日内の扱いとなります。

現金で納付する場合は、納付書を持って金融機関の窓口から納付します。納付をすると控えが返ってきますので保管しておきます。

まとめ

個人事業主にとって事業の決算を行う確定申告は、1年間の事業収支を見つめ直す良い機会となります。

確定申告の手続きは、決して難しい作業ではないため2年目、3年目と年数を重ねることで「こんなものか!」と理解が深まることでしょう。

また、よくわからない場合は、地域の商工会や青色申告会、所轄の税務署などに相談窓口があるのでうまく活用して進めてみると良いでしょう。