バーの開業に必要な資格・許可・届出・資金を詳しく解説

バーカウンターとカクテル

飲食店の中でもバーは人気の業態です。近頃は、お酒や接客の知識を勉強してバーの開業を目指してきた方だけではなく、脱サラ層による開業例も増えてきました。今回は、バーの開業準備ガイドとして、経営に必要な資格・許可・届け出・資金について、ご紹介します。

バーの種類

バーと言っても、多種多様な形態があります。それぞれコンセプトが異なるため、開業する際は自分に合ったタイプのバーを選びましょう。

オーセンティックバー

オーセンティックは「本物の」という意味を持ち、本格的なバーカウンターがある格式の高いバーのことをいいます。経験豊富で高い技術を持つバーテンダーが、カクテルを作り提供します。

オーセンティックバーは本物の雰囲気を楽しめますが、その一方で大人としての振る舞いが求められます。本格的なカクテルや雰囲気を提供したい方にはおすすめの形態です。

ショットバー

一杯ずつオーダーを受けてお客様に提供するバーを、ショットバーと言います。「ショット」は「ワンショット」の意味を持ち、ボトルではなくグラスでお酒が提供されます。

お店側としては、一杯ずつ提供するためお客様の滞在時間が短く回転率が高い、というメリットがありますが、その分客単価が低くなるため注意が必要です。

手ごろな価格で様々なお酒を堪能することができ、カジュアルな雰囲気のショットバーはオーセンティックバーよりも若い層がメインターゲットになります。

スタンディングバー

スタンディングバーは、読んで字のごとく「立ち飲みバー」のことを言います。店内にテーブルだけを置き、「軽く1杯飲んで帰る」ことに適したバーです。

椅子が不要で装飾も最小限にできるため、その分お酒を安く提供することができます。繁華街ももちろんですが、仕事帰りの会社員などをターゲットにした郊外や住宅地での出店も多い形態です。

ダイ二ングバー

ダイニングバーは、お酒と一緒に食事も楽しむことができます。複数人でわいわい楽しみながら時間を過ごすにはぴったりの形態です。

飲食店の側面が大きいため競合も多く、料理やお酒のメニュー、内装などによる差別化が求められます。

その他

上記の他にもプールバーやマジックバー、ミュージックバーなど、より狭いターゲットにセグメントしたコンセプトのバーもあります。

バーの開業・経営に必要な資格

バーテンダーとカクテル
バーの経営・開業に必要な資格をご紹介します。

食品衛生責任者

食品衛生責任者の仕事は「店舗の衛生管理」です。営業許可証1枚につき、食品衛生責任者が1人以上必要です。食品衛生責任者の業務内容は以下の通りです。

  • 設備の点検、不衛生箇所の是正
  • 従業員の健康管理
  • 衛星管理表の作成
  • 食材の管理とチェック

食品衛生責任者の資格取得には、各自治体で実施される養成講習の受講が必要です。ただし、以下の内容に該当する方は養成講習が免除されます。

  • 学校教育法に基づく大学、旧大学令に基づく大学又は旧専門学校令に基づく専門学校において医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学、農芸化学の課程を修めて卒業した者
  • 都道府県知事の登録を受けた食品衛生管理者の養成施設において所定の課程を修了した者
  • 医師、歯科医師、薬剤師、調理師、船舶料理士、製菓衛生師、食鳥処理衛生管理者、食品衛生管理者、食品衛生指導員もしくはその経験者、食品衛生監視員の資格取得者

防火管理者

防火管理者は消防法によって定められている国家資格であり、防火対象物の管理や予防、消火活動を行う者のことを言います。店舗収容客が30人以上の場合は、消防署へ「防火管理者選任届」の提出が必要です。

防火管理者になるためには、防火管理に関する講習を受講し、効果測定を実施して合格する必要があります。防火管理者の主な業務は以下の通りです。

  • 消防計画の作成
  • 消防計画に基づく消火・通報・避難訓練の実施
  • 消防設備、消防用水、消火活動上必要な施設の点検整備
  • 火気の使用、取扱いに関する監督
  • 避難又は防火上必要な構造・設備の維持管理
  • 収容人員の管理

バー開業に必要な届け出や許可

個人事業の開業届(開業届出書)

個人経営のバーを始める場合は、他の個人事業主と同様に「開業届出書(個人事業の開業届出)」を管轄の税務署へ提出します。
開業届を出すタイミングは「開業後1ヶ月以内」です。開業届を出すことで税法上有利になるなどのメリットもあるため、できれば開業してすぐのタイミングで忘れずに提出すると良いでしょう。

開業届作成に便利な「開業freee」



「開業freee」は、開業届などの開業書類をオンライン上で作成・提出ができるツールです。

項目を入力するだけで開業書類が自動作成できるため、手書きだと起こりがちな記入漏れやミスを防ぐことができます。また、難しい項目や単語についてもガイドが分かりやすく解説してくれるため安心です。

開業届以外にも、「青色申告承認申請書」やその他開業時に必要な書類に対応しています。初めて開業届を作成する個人事業主の方におすすめです。

食品営業許可申請

バーを含め飲食店を営業するためには、食品営業許可の申請を行う必要があります。保健所の現場検証が入ることもあるため、開業する2週間前までに保健所へ届け出をするようにしましょう。

主な提出書類は以下の通りです。

  • 営業許可申請書
  • 営業設備の大要・配置図
  • 許可申請手数料
  • 登記事項証明書(法人の場合のみ)
  • 水質検査成績書(貯水槽使用水、井戸水使用の場合のみ)
  • 食品衛生責任者の資格を証明するもの(食品衛生責任者手帳等)

営業開始後は施設や設備が基準通りに維持管理できているか、常に点検できる体制を整える必要があります。食品衛生責任者の名札を店舗内に掲示してください。

防火管理者選任届

防火管理者選任届は、店舗収容客が30人以上の場合、消防署へ提出する必要があります。防火管理業務の実施は、消防法第8条及び各条例で義務付けられています。

防火管理者選任届の提出後は消防計画を作成し、「消防計画作成(変更)届出書」を管轄の消防署へ届け出ます。

深夜酒類提供飲食店営業開始届

深夜酒類提供飲食店営業開始届は、午前0時以降も酒類を提供する場合、管轄の警察署へ届け出る必要があります。開店予定日10日前には届け出るようにしましょう。

深夜酒類提供飲食店営業開始届を提出していない場合、風俗営業法違反となりバーの営業停止に追い込まれることもあるため、必ず事前に届け出るようにしましょう。

特定遊興飲食店営業許可

特定遊興飲食店営業許可は、バーと併設してダーツやカラオケなどの遊戯施設を設置する場合、管轄の警察署へ届け出る必要があります。

「遊興」には鑑賞型サービスと参加型サービスの2つのカテゴリーがあります。バーで遊興施設を設置する場合は「参加型のサービス」に該当するため、その点を理解して届け出に臨んでください。

もし無許可で営業すれば風俗営業法大49条違反となり、2年以下の懲役若しくは200万円の罰金、又はこの併科の罰を受けることになりますので注意してください。

バー開業に準備すること

バーを開業するまでに、一般的に必要な準備を4ステップでご紹介します。

1.店舗用物件を借りる

まず、店舗用の物件を探しましょう。
立地は、集客にかかわる重要な要素です。また、客層にマッチする物件を選びましょう。例えば会社帰りに立ち寄ってほしい場合は駅近の繁華街に、落ち着いた雰囲気を提供したい場合は、繁華街から離れていた方が適していることもあるかもしれません。

店舗の内装に関しては、物件が決定してから業者に設計を依頼することもできます。できるだけコストを抑えて開業したい方は、もともとバーとして使用されていた「居抜き物件」を検討してみてください。

2.酒類や食品の仕入れ先を決める

継続的に取引を続けていくことになるため、酒類・食品の仕入れ先選定は重要です。具体的には「価格」「品質」「供給量」などポイントをチェックします。

・バーの規模にあった供給量を安価で提供してくれるか
・品質に問題ないか
・ボリュームディスカウントなど魅力的なサービスはあるか など

3.メニューを決める

店舗のコンセプトに合わせてメニューを決定します。メニューは、他店との差別化を図る重要な要素です。原価や利益も忘れずに算出してチェックしておきましょう。

4.スタッフを雇う

小規模なバーなら、スタッフは店主だけということも珍しくありません。
開店直後は利用客が少なくても、リピーターが増えるなどして次第に人手が必要になることも考えられます。そうなってから慌てることのないように、早めに人材を確保することも大切です。コスト面がクリアできるのであれば、スタッフの雇用を検討しましょう。

バー開業に必要な資金

電卓と手
バーを開業するには、どの程度の資金が必要になるでしょうか。一般的な例をご紹介します。

必要な資金

バー開業に必要な資金は、平均で約600万円といわれています。このうち400万円前後が物件に関する費用(賃借、内装工事)です。
また、これとは別に当面の運転資金も忘れてはいけません。これらを合計すると、地域や店舗の規模にもよりますが、1000万円前後になることもあるでしょう。

なるべくコストを抑えて開業するには、先ほどご紹介した「居抜き物件」探しや、仕入れ先選びの工夫が求められます。

黒字経営のために一工夫!

バーの黒字経営を目指すには、いくつかの工夫が必要です。

まず、仕入れのロスを抑えコストを圧縮することは基本と言いえます。経営を続けるごとに、メニューの人気傾向もわかり、必要な仕入れ量が把握できるようになってくるはずです。

また、開業時間についてもシビアに考える必要があります。時間帯ごとの来客数を分析しましょう。スタッフを雇用している場合は、ピークタイムにのみ人員を配置することで人件費を抑えられます。

また、決済の自由度は客単価を大きく上下させる要素です。対応している支払い方法が現金のみの場合、顧客は手持ちの現金を常に気にしなければなりません。クレジットカード払いに対応しておくと、顧客にとってもストレスなく支払いができます。

通常、事業者がカード決済を導入するためにはカード加盟手続きが必要ですが、クレジットカード決済代行会社のサービスを利用すれば、その手続きを一任できます。また、カードの運用・管理も任せられます。店内業務から経営までを幅広く行うバー経営者の方にとって、非常に役立つはずです。

おわりに

バー経営で黒字を継続するのは簡単ではありませんが、常にコストや経営のロスを分析し、無駄をなくすことで利益増が見込めます。今回ご紹介した知識を参考に、バーの安定経営を目指しましょう。