青色申告の個人事業主がクレジットカード払いをした際の仕訳方法について
施術スキルだけでなく体力も要する美容師は、若くして事業者としての独立を考える人も少なくありません。
しかし独立には開業資金をはじめ多くの準備が必要なことから、不安な気持ちを抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、美容師が独立してサロンを開業するために必要な準備について詳しく解説します。独立に興味があるものの、実際にはどのような準備をすればよいかわからないという方はぜひ参考にしてください。
従業員として雇われて働く場合と比較して、美容師が独立することのメリットおよびデメリットについて解説します。
働く時間を自由にコントロールできるのは、独立する最大のメリットであると言えるでしょう。雇われて働く場合のように、決められた営業時間や出勤日数を厳守する必要はなくなります。
たとえば予約が入っていなければ早めに閉店したり、家族の行事に合わせて定休日以外に休業日を設けたりすることも可能です。プライベートを楽しむ時間が増え、ライフワークバランスを保ちやすくなるでしょう。
ただし、頻繁に店を閉めていると顧客の信用を失うこともあるので注意が必要です。また当然のことながら、仕事を減らした分だけ収入は減ることになります。
仕事量に応じて収入が増えるため、働きがいを感じられるのも独立するメリットです。
日給制や月給制で雇用されていると、どんなに忙しくても得られる給料はほとんど変動がありません。また、部歩合制で計算する場合でも限界は見えているでしょう。
独立後は、店舗の売上から必要経費を引いたものが自分の収入です。
顧客を多く獲得する、相場より高くても需要のある質の高いサービスを提供する、経費を節約するなど、さまざまな観点から年収が増える可能性が広がります。
美容師は体力を要する仕事です。特に年齢を重ねると1日中立ち仕事をするのは辛くなりますが、雇われている以上、自分の都合で制限できるものではありません。
独立して店舗を運営すれば、若いスタッフを育てながら自分が現場に立つ割合を徐々に減らすことも可能です。経営の仕事がメインになれば、年齢を気にすることなく長く働くことができるでしょう。
独立後は、すべての責任を1人で負わなければなりません。たとえば体調を崩して仕事ができない場合、雇われの従業員であれば他のスタッフが担当を代わってくれたり、運営者がカバーしてくれたりするでしょう。
一方で、独立して従業員も雇っていなければ、自分の代わりを務めてくれる人は誰もいません。万が一の時に自分の代わりがいないのは、精神的にも大きなプレッシャーになるものです。
また、顧客とのトラブルが発生した際や美容室の経営状況が悪化した場合なども、基本的に一人で解決する必要があります。独立するということは、店舗に関わるすべての責任を負うということです。
美容師としてのスキルが優れている人が、独立後に必ず成功するとは限りません。店舗を長く経営していくためには、顧客の対応以外にもさまざまな業務をこなす必要があるためです。
開業時に融資を受けていれば計画的に返済するための資金繰りが必要になるでしょう。また、従業員を雇うのであれば採用から雇用後の教育などが欠かせません。
その他にも美容室で使用する消耗品の発注や在庫管理など、すべての業務を務めたうえで経営が成り立つのです。
【美容師の独立】
メリット | ・働く時間を制限されないためライフワークバランスが保たれる ・収入が増える可能性が高い ・施術者を引退しても経営者として長く働ける |
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デメリット | ・代わりがいない ・責任をすべて負う必要がある ・長く続けるためには施術者以外のスキルも必要 |
美容師が独立するには、大きく分けて4つの方法があります。
もっとも一般的な独立方法と言えるのが、個人サロンの開業です。美容師自身が経営者となり、開業準備から日々のサロン運営まですべてを行います。
自由度が高く理想のサロンづくりが叶う一方で、すべての判断を1人で行うのは簡単なことではありません。独立に際して、美容師の技術以外にも多くのことを学ぶ必要があるでしょう。
なお、後の項で解説する独立準備については、基本的に個人サロンの開業を前提としたものになります。
パートナーシップ契約による開業とは、実際にサロン運営を行う開業者と、資金面などのサポートをするパートナーが共同で開業する方法です。
開業者となる美容師にとっては、費用面の負担を少なく独立できるというメリットがあります。ただし、この方法を希望する美容師全員にパートナーが見つかるわけではありません。
信頼のおけるパートナーが見つかり、お互いが納得できるような契約の条件が一致した場合にのみ可能な独立方法です。
のれん分けとは、従業員として働いてきた店舗の屋号(サロン名など)の使用権を得て、新たな店舗を開業する方法です。
既に存在するサロンの知名度を活用できるため、個人サロンの開業に比べて独立後の経営が安定しやすい傾向にあります。
ただし、屋号を借りている以上、独立後のトラブルなどで迷惑をかけることのないように注意が必要です。
また、開業費用の負担割合やロイヤリティ(権利の使用料)など金銭面をしっかり確認し、納得したうえで独立するようにしましょう。
フランチャイズ契約とは、フランチャイズ本部となる企業の加盟店として開業する方法です。のれん分けとは異なり、独立前にその企業での勤務経験は問われません。
フランチャイズ加盟店は本部の経営方針などに従う必要があるため、独立の中では自由度が低い方法です。
とはいえ既に構築されているブランド力や経営ノウハウを利用できるというメリットもあります。他の独立方法に比べてスピード感をもった開業が可能でしょう。
費用面においては、売上に関わらず決められた加盟料の支払が必要な場合などもあるため契約の詳細をよく確認しましょう。
【美容師が独立する方法】
個人サロンの開業 | ・完全にオリジナルのサロンを開業する ・もっとも自由度が高い ・全ての責任が自分にある |
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パートナーシップ契約による開業 | ・全ての責任が自分にある ・運営者(美容師)の費用負担が少ない ・条件の合うパートナーが見つからないことも |
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のれん分けによる開業 | ・勤務していたサロンの屋号で開業する ・個人サロンより経営が安定しやすい ・契約内容をしっかり確認すること |
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フランチャイズ契約による開業 | ・フランチャイズ加盟店として契約して開業 ・独立の中では自由度が低い ・既存のブランド力や経営ノウハウを利用できる |
独立後に1人でも従業員を雇う予定がある場合、管理美容師の資格を取得する必要があります。管理美容師の資格を取得する条件は以下の通りです。
なお講習会は年に2回しか開催されず、時期は都道府県ごとに異なります。タイミングを逃してしまうと次回は約半年待たなければならないため、早めの確認がおすすめです。
管理美容師資格の取得について更に詳しくは、以下のページを参考にしてください。
公益財団法人 理容師美容師試験研修センター
開業後は店舗の運営が忙しくなることが予想されます。すぐに従業員を雇う予定がない場合でも、将来を見据えて独立前に資格を取得しておくのもよいでしょう。
美容師が独立するのに、資金面は大きな問題です。
開業方法やサロンの立地・面積・扱う機材の種類などによって大きく異なりますが、少なくとも数百万単位、多くの場合1,000万円を超える費用を準備する必要があります。
自己資金で必要な額のすべてを賄えるケースは珍しく、何らかの支援や融資を頼ることになるでしょう。
前項で紹介した個人サロン開業以外の独立方法を選択する場合も、やはり資金面でのメリットが大きく関与しています。
自分がどのような形で独立を目指すのか、また資金面を含めて実現性はあるのかについてもよく考えたうえで独立の準備を進めることが重要です。
前述したように、美容師が独立開業するためにはさまざまな方法があります。本項では、個人サロンとして独立することを前提とした準備について解説します。
サロンのコンセプトは、独立を決意したら早い段階で設定する必要があります。明確なコンセプトがあれば、その後の開業準備をスムーズに進めることができるためです。
コンセプトは、開業者の好みなど自己都合で決めないように気をつけましょう。
サロンを開業するエリア内において主な客層となるターゲットを割り出し、その層に需要が高いものでなければなりません。
また、同じようなコンセプトで運営している既存のサロンの有無も確認する必要があります。
開業準備を進める過程でコンセプトの変更を余儀なくされると、ターゲットにミスマッチだったり、サロン全体の統一感がなくなってしまったりするなどの問題が発生してしまいます。しっかりとコンセプトを定め、それに準じた開業準備を行えるようにしましょう。
美容師が独立資金を個人で全額準備できることは稀で、多くの場合は融資を受けることになるでしょう。
融資を受ける額は、以下の項目についてそれぞれどのくらい必要なのかを想定したうえで決める必要があります。
なお融資を受けるための審査には事業計画書の提出が求められます。
事業計画書の書き方については以下の記事を参考にしてください。
店舗の家賃は、今後の業績に関わらず毎月必ず発生するものです。どんなに条件がよくても、資金繰り計画に無理のない範囲に収めることを意識しましょう。
もし、想定する予算を超える物件を契約するのであれば、他に節約できる点を探すなどの工夫が必要です。
また、美容院は水を多く利用するため、物件によっては水道の配管を交換するなどの内装工事が必要になることもあります。契約後に想定よりも多くの工事費がかかってしまうことのないように、事前にしっかり確認しましょう。
なお内装工事を実際に着工する前の段階で以下の届出や手続きが必要です。早い段階で相談するようにしましょう。
消防署 | ・防火対象物使用開始届出書の届出 ・防火対象物工事等計画届出書の届出 ・防火管理者 ※条件によって不要の届出もあり |
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保健所 | ・美容所開設届 ・内装が条例で設定された基準に適しているかの確認 |
また、内装工事の完成後には、保健所による立ち入り検査が実施されます。
サロン内のインテリアは、コンセプトに沿ったものであることが大切です。運営者の個人的趣味で選ばないように注意しましょう。
施術に使用するスタイリングチェアや鏡、シャンプー台などの色やデザインを選ぶ際も同様で、常にコンセプトを意識することで統一感のある空間に仕上げることができます。
独立当初は特に、思うように集客できないことも多いでしょう。そのため、開業準備の時点で多くの集客方法を模索しておくことが大切です。
近年ではWebによる集客が主流と思われがちですが、ターゲットによってはまだまだアナログな方法でも成果を期待できます。
特に美容院のように実店舗ありきのサービスの場合、顧客が住む範囲はある程度限定されるものです。ポスティングなども積極的に行いましょう。
もちろんホームページの開設やSNSアカウントの運用など、Web集客の対策も欠かせません。
特にSNSアカウントは、無料で始められるうえに気軽に更新できる優れた集客方法です。ターゲット層が特に多く利用するプラットフォームを中心に有効に活用したいものです。
Web集客全般について詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
また、店舗の存在をアピールするために欠かせないのが、Googleマップへの登録です。運営者自らが情報を提供することで、顧客の求める正しい情報が表示されるようになります。
Googleマップに店舗情報を登録するための手順については以下の記事で解説しています。
個人事業主として独立する場合を例に、必要な届出を解説します。
いわゆる「開業届」と呼ばれているもので、事業を開始(および廃止)した際に提出する書類です。新規事業を知らせるとともに、今後事業主として納税する意志を示すものでもあります。
開業日から1ヶ月以内の提出が期限となっているので忘れずに提出しましょう。
開業届の詳しい書き方については、以下の記事を参考にしてください。
年に一度の確定申告において、青色申告を希望する場合に提出する書類です。
青色申告は白色申告よりも節税効果が高いというメリットがあるものの、複雑な帳簿づけが条件となっているために難しいと感じる事業者も少なくありません。
開業初年度から青色申告を希望する場合、開業日から2ヶ月以内に申請書を提出することが条件となるため早めに判断しましょう。
青色申告と白色申告の違いについては、以下の記事も参考にしてください。
納税地は、納税者の居住地であることが一般的です。
しかし事業者の希望によって、サロンの住所がある場所に納税する場合は税務署に本書の届出が必要です。
内容は開業届と似ていますが、開業届が国に納める所得税のための申告なのに対し、本手続きはサロンの住所がある各都道府県税を管理する事務所への手続きです。
なお届出書の名称は事務所によって異なることがあります。
税務署 | ・個人事業の開業届出・廃業届出等手続 ・所得税の青色申告承認申請書 ・所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書 |
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都道府県税事務所 | 事業開始(廃止)等申告書 |
キャッシュレス決済の普及に伴い、顧客が希望する支払い方法を複数の中から選択することが当然のように行われています。
美容院においても例外ではなく、現金払い以外にも何らかのキャッシュレス決済方法を導入することが理想的だと言えるでしょう。
以下の記事では、キャッシュレス決済の種類や選び方について解説しています。
開業するサロンで従業員を雇う場合、事業者が行うべき手続きは少なくありません。
従業員へ労働条件通知書の交付や、必要に応じて年金や保険の手続きも事業者が対応することになります。
また以下の届出が必要になりますので早めに確認しておきましょう。
労働基準監督署 (全国の監督署を探す) |
・個人事業の開業届出・廃業届出等手続 ・所得税の青色申告承認申請書 ・所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書 |
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公共職業安定所(ハローワーク) (全国の安定所を探す) |
事業開始(廃止)等申告書 |
美容師の独立はライフワークバランスの保ちやすさや収入面など、魅力的なメリットが目立ちます。
その一方で、決して安いとは言えない開業資金など、独立までの準備が大変なことも事実です。
しかし、一般的な独立のイメージである個人サロンの開業に限らず、美容師が独立するための方法はさまざまです。それぞれの特徴を理解したうえで、自身に最適なものを選択しましょう。
また、独立後に長く事業を続けるためにも、開業準備から施術スキル以外の多くのことを学ぶことも重要です。