エステサロンの特定商取引法(特定継続的役務)とは?

エステサロンは開業に至るまでの公的な申請作業が比較的簡単なため、多数の開業希望者が存在します。エステティシャンに国家資格は存在せず、「日本エステティック協会」の資格制度などが、エステティシャンの実績と信頼性を提示するもののひとつとなっています。

協会が発行する資格を取得することは決して安易な工程ではありません。人体の細部にわたって存在する部位の名称を覚えたり、衛生面や安全面、栄養面などについての知識も日々アップデートしなくてはいけません。

エステサロン開業にあたり、上記のような資格はあった方が良いに超したことはありませんよね。そしてもうひとつ、開業するための大切な側面があります。
それは特定商取引法についての知識です。こちらの記事では、特定商取引法の抑えておくべきポイントを解説します。

今回の記事では下記について解りやすく説明します。
現在サロン経営しているオーナーの方は、是非参考にしてください。

エステサロン経営志願者が注意するべき、違法に成り得る3つの落とし穴

エステサロン経営志願者が注意するべき、違法に成り得る3つの落とし穴
2019年度のエステサロン業界の市場規模は3,590億円億円ほどです。(参照:矢野研究所)ゆるやかではありますが年々増加傾向にあり、特に女性からは根強い人気があります。一般ニーズに応えるために、サービスや施術時に使用する国産アイテムの品質も世界レベルに劣らないものとなりつつあります。

国家資格保有を必要とせず、潤沢な資金力とマーケットリサーチが充分にできていれば開業可能な「エステサロン業界」ですが、法的な側面を軽視することはできません。

飲食店や物販店などの起業とは異なり、人体に関わるサービスであるエステサロンの開業には、注意しなくては違法になってしまう事項が存在します。
特に注意すべき「特定継続的役務提供」について、3つの例をご紹介しましょう。

エステサロンサービス提供者は事業者でなければならない

実際の店舗で提供されるサービス従事者(提供者)は、開業申請した事業者と同一人物でなくてはいけません。ここにある「事業者」とは、その営利目的の意思をもって継続的にユーザーと取引を行う人物という事です。法人事業者だけではなく、規模が小さい個人サロンの個人事業主にも該当する規則です。

ここでは下記2点を抑えておきましょう。

・一過性の取引ではなく、継続的に反復するサービスであること
・規模に関係なくエステサロンを経営する事業者ほぼ全員が該当すること

【1つ目の落とし穴 】
申請事業者が第三者へその経営権利を又貸ししてエステサロンを経営することはできませんし、1回だけの施術目的でエステサロンを運営する事はできません。

日本国内で指定されるサービス内容を提供する義務

特定商取引法に基づき、特定継続的役務提供は次のような業務内容を示しています。

”人の皮膚を清潔にしもしくは美化し、体型を整え、または体重を減ずるための施術を行うこと ”

この業務内容は、脱毛、マッサージ・パック等を含む美容クレンジング、代謝促進を含むエイジングケア、ボディケア、3Dデザイン-リフトケア・ホワイトニングフェイシャルなどの美顔ケアなどが考えられます。

ここでは下記2点を抑えておきましょう。

・エステサロン、美容医療問わず人体の皮膚からの施術を伴うサービスのみに特化していること
・健全な美容/代謝促進効果を目的とし、体型補正や体重を減らすためのサービスを提供すること

【2つ目の落とし穴 】
人体内への医薬品の投与や、血液の体内循環を高めるためのサプリメントの提供などは、日本国内の特定商取引法に於いて、指定/許可されているサービスではないため行ってはいけません。

ユーザーとのサービス提供契約期間と金額が一定以上である義務

エステサロンにおいて「特定継続的役務提供」にあたる契約事項内容は以下の通りです。

①サービス提供期間は1ヶ月(28〜31日間)以上であること
②サービス(施術)への設定費用が5万円を超えること

上記は必須事項です。上記の規定が、特定商取引法の規制対象となるか否かの重要な判断材料になるため、ユーザーへのサービス期間と値段設定は明確に打ち出しておく必要があります。

例:
● 契約期間・・・3ヶ月 サービス金額・・・6万円 → ○適用対象
● 契約期間・・・2ヶ月 サービス金額・・・2万円 → ×適用対象外
● 契約期間・・・1ヶ月未満 サービス金額・・・8万円 → ×適用対象外

ここでは下記2点を抑えておきましょう。
・サービス提供期間が1ヶ月か否かは、契約書の記載のみではなく、実質的な施術内容によって判断される(書面上の契約期間記載だけでは認められない)。
・サービス費用については、入会金/サービス関連商品販売の売上げ、サービスチャージや消費税を含めた総額が対象となる。サブスクリプション、前払い、後払い、クレジットカード払いなど、その支払い方法に指定はない。

【3つ目の落とし穴 】
特定のサービス期間を担保せず、期間中に5万円を下回る低価格でサービスを提供することはできません。

上記の通り、規則として守らなくてはいけない事、規定範囲外となり違反となる事がご理解頂けたと思います。事業者とサービス提供者が同一であること、国内の指定サービスの範囲内で提供すること、期間と金額のバランスをしっかりと保つこと、この3点を忘れないように注意しましょう。

広告のNGワードと正しい表記方法

広告のNGワードと正しい表記方法
これからエステサロンの設立をお考えの方が絶対に抑えておくべき、「広告の誇大表現」についてご紹介します。
エステサロンの事業発展のためには様々な媒体を介して宣伝する必要がありますが、広告表現には景品表示法(不当景品及び不当表示防止法)という規定があります。これは、薬事法や医師法などに抵触する可能性がある表示や表現を取り締まるために発起され、消費者である一般ユーザーが安心してサービスを利用できるようにするための法律です。

エステサロンの広告的表現は、「効果・改善効果がある」「治療効果がある」などの発言は控えた方が良いと言えるでしょう。理由はとても簡単で「医学的なエビデンスがないから」です。

何点か具体的な例を挙げて、広告では謳ってはいけない表現についてご紹介します。

①イメージ写真で施術前後を紹介して効能を煽る広告はNG

サービス(施術)前・後の表現(イメージ写真等を利用して)は、景品表示法の優良誤認になるため不当表示に抵触します。画像の右下に小さく「写真はイメージです」「写真は一例です」というキャプションを付けても不当表示として扱われ違反になります。

②常識的概念から一脱している表現はNG

「1日10分で効果がでます」「1日1回の洗顔で美容効果があります」など、常識的概念から外れるような画期的効果を煽る表示・表現は優良誤認の景品表示法に抵触します。

③サービスを過大に誇張する表現はNG

アンチエイジングという表現を際立たせるための、下記のような根拠が明らかではない単語を利用した表現は違反になる可能性があります。

 ・総合(トータル)アンチエイジング
 ・老化現象にサヨナラ
 ・世界最強のアンチエイジング

厚労省が定める広告表示以外の効果表現(化粧品)という側面から、景品表示並びに薬機法の優良誤認・広告表示違反としてだけではなく、景品表示法、薬機法にも抵触します。

同様に「細胞再生」「肌再生」「成長ホルモン促進」「若返り認定」「ニキビ急速改善」なども同等の不当表現として扱われるため使用を禁止されています。

④エステサービスの範囲を超えた施術を提供するかのような表現はNG

医療業務の一環として見なされる可能性がある「若返る点滴」「体内から美しくなる血液クレンジング」「小顔矯正」などの表示・表現も、根拠が不明という点も含んで使用が禁止されています。

上記はあくまでも一例としてご紹介しました。月刊雑誌やポスティングチラシ等で一度は見た事があるフレーズがあったと思いますが、集客を目的とした誇大表現は控えるようにしましょう。

まとめ

まとめ
この記事では、特定商取引法についての重要性と、広告展開の際に使用が禁止されている表現についてご紹介しました。

エステサロンという業態が特別という事ではなく、他の業態であっても開業時には何らかの規制が伴います。

・反復性(継続性)を必要とするサービスであること
・サービス料金を国内で規制されている範囲を考慮すること
・誇大表現で集客を募る広告展開をしないこと

上記の3点を確実に守ることで、エステサロンのスムーズな開業と運営を実施することができるでしょう。お住まいの自治体関係部署でも相談することもできるため、是非利用してみてください。