【初めて法人を設立する方へ】法人設立後に行うべき手続きとは?期日とともに解説します

はじめて法人を設立する経営者の方へ。法人設立後に行うべき手続きにはどんなものがあるのでしょうか。届出は何をいつまでに何処へ届け出すべきなのかを詳しく解説します。

会社の設立登記が終わっても、それで手続きは終わりではありません。事業の実務を開始すると同時に、法人設立後に開業までに行わなければならない手続きがあります。

主な手続きは公的機関への届出です。期限があるものも多く、うっかり忘れてしまえば会社にとって後に思わぬ不利益となることがあるため注意が必要です。必要な手続きを確実に進めていくために、会社設立後に必要な手続きとその期限などを紹介します。

法人設立後に必要な手続き

法人設立後に必要な手続き

会社設立後に必要となる主な手続きは、以下の4つです。

 法人口座の開設 → 金融機関へ
 税務についての届出等 → 税務署へ
 地方税についての届出 → 地方自治体へ
 社会保険についての届出 → 年金事務所等へ

これらの届出には、期限があるものや各種資料の添付が必要なものもあります。余裕を持って忘れずに手続きをしたいものです。届出自体に費用はかかりませんが、場合によっては経費をかけてでも専門家に依頼できることはお願いしたり、自社でできることは自社で対応するなど、上手く振り分けて法人設立の忙しい時期を乗り越えることが大切になります。

それには、まずはどんな手続きが必要なのかしっかりと把握していきましょう。

 

法人口座の開設手続き

金融機関で法人名義の口座を作成します。個人名義ではない会社名義の口座は、法人口座といいます。会社の設立登記前は法人口座の開設はできませんが、会社設立後は会社名義の取引口座が作成できます。

ただし、法人の銀行口座の開設は審査があり、各種資料が求められ、開設に時間がかかることもあります。そのため、会社設立後はすみやかに手続きすることをおすすめします。法人口座開設に必要なものは以下の通りです。

  • 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
  • 代表者の印鑑証明書、実印
  • 会社の定款
  • 会社印
  • 会社の運営実態がわかる資料 など

金融機関によって必要な書類や資料は異なります。詳細は口座開設を検討している金融機関のWebサイトを参考にし、場合によっては事前に金融機関に確認して書類や証明書等を予め準備しておきましょう。

 

税務署への国税の届出

法人設立届出書をはじめとする国税関係の書類を、本店所在地がある地域を管轄する税務署へ提出します。所轄の税務署は国税庁サイトから調べることができます。

尚、個人事業主として開業届を出していた場合は個人事業の廃業届の提出が必要です。

【必要書類】

  • 法人設立届出書
     添付書類:定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるもの(定款等)の写し
  • 青色申告の承認申請書
  • 給与支払事務所等の開設届出書
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書、兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書

 

都道府県・市町村への地方税の届出

都道府県および市町村に対し「法人設立届出書」を提出します。法人設立届出書は、法人を新たに設立して事業を開始した際に、本店所在地となる都道府県税事務所、市町村役場に対し提出が必要となります。

税務署に提出する書類は「国税」に関するものであるのに対し、都道府県・市町村には住民税や事業税など「地方税」に関する届出となります。尚、東京23区の場合は都税事務所のみで、区役所へ提出する必要はありません。

税務署への手続とは異なり、非営利の一般社団法人であっても、法人設立届出書の提出が必要です。

【必要書類】

  • 法人設立届出書
    (都道府県、および市町村役場によって呼称が異なります)

【添付書類】

  • 定款の写し
  • 登記事項証明書

※申請書類の形式は、都道府県・市町村区によって異なります。提出先の各自治体のWEBサイトで確認してください。

 

社会保険

会社設立後は特別な例を除き、社会保険へ加入しなければなりません。年金事務所、労働基準監督署、ハローワークなどに対して、社会保険関係の届出を行います。

届出が必須で会社設立から提出期限が短いものもありますので、忘れず速やかに提出するようにしましょう。

 

年金事務所へ健康保険・雇用年金の加入手続き

所轄の年金事務所に、厚生年金と健康保険に加入するための届出として、新規適用届、被保険者資格取得届、健康保険被扶養者(異動)届を提出します。法人の場合は、健康保険と厚生年金保険は強制適用のため新規適用届は必須です。健康保険は病気や怪我をしたときのために、厚生年金保険は高齢者となり働けなくなったときのために備える制度です。

被保険者資格取得届および健康保険被扶養者(異動)届は、従業員を雇用した時と従業員に扶養関係が生じたときに提出します.

【必要種類】

  • 健康保険・厚生年金保険新規適用届
     添付書類:登記簿謄本
          法人番号指定通知書等のコピー
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
  • 健康保険被扶養者届(被保険者に扶養者がいる場合)
     添付書類:戸籍謄本等
          年収が130万円未満であることが証明できる書類

 

労働基準監督署への労災保険の届出

会社を設立して従業員を雇った場合には、労働保険への加入が必要です。労働保険には、労災保険と雇用保険があり、このうち労災保険の手続きは、所轄の労働基準監督署で行います。

労働保険関係成立届は、従業員を初めて雇用した時に労災保険に加入するための届出です。
また、労働保険概算保険料申告書は、労働保険料を申告・納付するための届出です。就業規則届は、常時10人以上の労働者を雇っている場合に提出が必要です。

【必要書類】

  • 労働保険関係成立届
  •   添付書類:登記簿謄本等

  • 労働保険概算保険料申告書
  • 就業規則(変更)届 
     添付書類:就業規則の作成又は変更に関する労働者代表の意見書
          就業規則本文
  • 適用事業報告書

ハローワークへの雇用保険の届出

前述の労働基準監督署への届出が完了したら、ハローワーク(公共職業安定所)の窓口で雇用保険の手続きを行います。雇用保険の届出には、労働保険関係成立届の控えが必要となりますので、必ずこの順序で手続します。

【必要書類】

  • 雇用保険適用事業所設置届
  •  添付書類:登記事項証明書
          雇用契約書

  • 雇用保険被保険者資格
  • 労働保険関係成立届の控え(労働基準監督署に提出した控え)

必要書類の提出期限

必要書類の提出期限

会社設立後の主な届け出の提出期限を、届け出先別にまとめました。

 

銀行

会社の口座開設の手続き

・口座開設依頼書など
設立登記後すみやかに手続きする

 

税務署

国の税金、国税に関する届け出

・法人設立届出書
会社設立日から2か月以内

・青色申告の承認申請書
会社設立日から3か月以内、または最初の事業年度終了日のいずれか早い方の前日

・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則として、提出日の翌月に支払う給与等から適用

・給与支払い事務所等の開設届出書
会社設立日から1か月以内

 

都道府県税事務所・市町村役場

地方税に関する届け出

・法人設立届出書
都道府県税事務所…会社設立の日から1か月以内(各都道府県によって若干異なる)
市町村役場…会社設立の日から2か月以内(各都道府県によって若干異なる)
※東京23区は都税事務所のみの提出でOK

 

年金事務所

健康保険や厚生年金の加入手続き、これらに関する届け出

・健康保険、厚生年金保険新規適用届
会社設立から5日以内

・健康保険、厚生年金保険被保険者資格取得届
被保険者資格を所得した日から5日以内

・健康保険被扶養者届
被保険者に不要者がいる場合、被保険者を取得した日から5日以内

 

労働基準監督署

労災保険の加入や労働法に関する届け出

・労働保険 保険関係成立届
従業員を雇った日の翌日から10日以内

・労働保険 概算保険料申告書
労働員を雇った日から50日以内

・就業規則届
常時10人以上の従業員を屋っとている場合、すみやかに届け出る

・適用事業報告書
従業員を雇い入れた時に遅延なく提出。従業員が同居の親族だけの場合は不要

 

ハローワーク

雇用保険の加入手続きや雇用保険に関する届け出

・雇用保険適用事業所設置届
適用事務所になった場合、その日の翌日から10日以内

・雇用保険被保険者資格
従業員を雇った日の翌日から10日以内

手続きの期限が切れてしまったら?

手続きの期限が切れてしまったら?

さまざまな手続きの提出期限が過ぎてしまうとどうなるのでしょうか?

税務署への青色申告の承認申請を例に挙げてみましょう。申請を忘れると、青色申告の特典を受けることができません。法人税や住民税が増えてしまうこともありますので注意が必要です。

また、雇用関係の手続きの漏れはトラブルや会社の信用にも大きく関わるので、くれぐれも気を付けたいものです。例えば、会社が労働保険の届出を忘れていた場合、就業中にケガをした従業員に非はないため一旦は労災が適用されますが、就業中のケガは会社の責任であり、強制加入の労災保険料は遡って支払わなければなりません。

それだけでなく、故意又は過失による未加入と判断されれば、保険料や給付金を追加徴収されます。決められた期限までにすみやかに諸々の手続きを行うことを心がけ、場合によっては税理士や行政書士、司法書士など専門家に手続きを依頼することも有益でしょう。

その他早めに行うべきタスク

その他早めに行うべきタスク

役所等への手続き関係のみならず、会社設立後にはすみやかに行うべきことがいくつかあります。中でも重要なのが、関係各所へのあいさつ回りや、さまざまなツールを使用した宣伝・広告で新しい事業を多くの人に認知してもらうことです。

 

名刺・自社サービスの資料作成

会社の所在地・電話番号が決まったら、まずは速やかに名刺を調達しましょう。専門の印刷会社には実店舗のある印刷会社とネット印刷サービスとがあります。ハンコを作成する業者でも名刺作成を取り扱っています。近年では、事業を効果的にアピールするための名刺デザインを手がけるデザイナーやコンサルタントなどのサービスも人気です。

また、事業内容に合わせてパンフレットやチラシ、フライヤーなども準備しましょう。店舗であれば、オープンに合わせてチラシの配布や新聞折込などが効果的です。

 

関係者や取引先へのあいさつ

会社の設立・開業・起業を知ってもらうためには挨拶状は重要です。WEBでの告知やEメールでのお知らせでも問題はありませんが、挨拶状なら新たな門出の決意をより印象よく伝えることができます。関係者や取引先、お得意様など、現在までにお世話になった方々への挨拶は忘れずに行いたいものです。挨拶状は必ず開業前に送付を完了させるようにしましょう。

挨拶状の文面には、新会社を設立したことをお知らせするとともに、事業内容、開業日(営業開始日)、新住所・電話番号・会社名などを明記します。「導入文の挨拶」から始まり、「会社設立・開業・起業にいたった経緯」や「感謝の言葉」を簡潔にまとめるとよいでしょう。

 

WEBやSNSで告知する

できれば会社や店舗等のサービスや商材を紹介するWEBサイトを開設しましょう。ホームページ制作会社に依頼し、本格的なホームページやブログなどのWEBサイト運用が理想です。しかし、予算的に難しい場合は簡単に作成できるツールも多数ありますので自社で作成してもよいでしょう。

また、無料で自社の登録ができるGoogleマイビジネスはぜひ利用したいサービスです。顧客がGoogle等で検索した際に、会社の情報が画面の右側に大きく出たり、Googleマップ上で表示されたりします。

自社のWEBサイトが準備できれば、Google広告(旧:Googleアドワーズ)や、Yahoo!プロモーションなどのクリック課金の広告を利用してもよいでしょう。これらの管理を自社で行うことが難しい場合には、WEB専門の広告代理店を利用するも手です。

さらにtwitterやFacebook、Instagram、LineなどSNSの利用も効果的です。ただし、こまめな情報更新が必須となります。

手続きを税理士・行政書士・司法書士へ依頼する場合

手続きを税理士・行政書士・司法書士へ依頼する場合

一般的に会社設立時には、税理士や行政書士、司法書士、社会保険労務士など、さまざまな士業の先生に依頼する方が多いものです。もちろん1から全て自社で手続きをすることもできますが、会社設立後の業務は手続き以外にも山ほどあるため、任せられるものは専門家に依頼しましょう。

それぞれの資格に応じて、どの士業の先生に何を依頼するべきなのか、依頼する場合のメリットと費用感を解説します。

 

税理士に依頼する場合

税務関係の届出書の作成や提出を代行できる税理士は、決算や申告といった経理まわりの作業に強いのが特徴です。

決算処理の業務は不慣れだったり、取引が複雑だったりと思いのほか手間と時間がかかるものです。専門家にお任せすることで、起業家は本来の業務に集中することができます。会社設立後の申告の際には、特に頼りになるはずです。また、税金を抑えるための相談や、会社の財務状態から判断した経営アドバイスも可能というメリットもあります。

費用としては、税理士は会社設立支援、会社設立後の会計記帳と決算、各種申告など一式がセットになっているケースが多いため割安感があります。税理士によっては、会社設立後の税務を代行する業務を承れば、会社設立支援に関しては無料という場合もあります。

 

行政書士に依頼する場合

行政書士に依頼すべき業務は、会社設立や新規事業開始時の許認可手続きです。例えば、建設業・運送業・飲食業などが認可を得るためには、書類作成などが必須となりますが、時間も労力もかかるものです。このような手続きを行政書士に依頼すれば、効率的に業務が進められるというメリットがあります。

ただし、行政書士は会社設立に際する登記手続きの代行をすることはできません。法人の登記手続きが代行できるのは司法書士のみです。登記手続きに関しては、司法書士に依頼するか自身で行う必要があります。

行政書士には具体的な相場はなく、認可取得に必要な費用に加えて報酬を支払う形式となります。認可対象の業務によっても異なりますが、費用は数十万円前後と考えておけばよいでしょう。認可取得のみの単発での依頼ではなく、複数の業務を依頼することで割引されるケースもあります。

司法書士に依頼する場合

前述したように、法人登記手続きの代行は司法書士だけに認められています。法務局の窓口で登記をするのには、移動時間や待機時間を含め、かなりの時間が必要です。会社設立時の忙しい時期に手間暇のかかる手続きは、時間節約のためにもぜひとも利用したいものです。司法書士の多くは、電子定款認証にも対応しています。定款をPDF化し、法務省へインターネットでの登録を委任することもできます。

行政書士と同じく、司法書士に依頼する場合の相場は明らかにされていませんが、会社設立には定款認証で5万円、登録免許税で15万円がかかりますが、プラス司法書士への報酬が加わる形になります。

おわりに

登記が完了し一安心したのも束の間、会社設立後にも多くの手続きが残っています。これらはしっかりと行わなければ、会社の信用を損なってしまうばかりか、懲罰を受けてしまう場合もありますので、各機関へ期限内に忘れずに対応することが大切です。

初めて法人を設立する方は、税理士や行政書士、司法書士など各種の専門家を利用することも検討してみてはいかがでしょうか。会社設立後に必要な手続きのお手伝いはもちろん、手続き時だけでなく、その後の普段の経営においても力になってくれるはずです。自ら全てを準備するのは大変と感じている方や効率よく時間短縮したい方は、ぜひ専門家の利用をご検討いただき、会社設立後の手続きをスムーズに進めてください。