【2021年度版】個人事業主の確定申告初めてガイド~基本編~

個人事業主は自分で確定申告をする必要があります。

しかし、初めて確定申告をする際は青色申告と白色申告の違いやそれぞれのメリットなどがよく分からない人も多いのではないでしょうか。

「確定申告は煩雑で難しそう」と身構えてしまう人もいるかもしれませんが、確定申告をすることで税金が返ってきたり節税できたりといったメリットがあります。

そこで今回は、個人事業主が確定申告をする際の基礎知識や青色申告・白色申告の違い、それぞれのメリットなどを徹底解説します。

初めて確定申告をする個人事業主の人はぜひ参考にしてみてください。

確定申告とは

確定申告とは自分で商売や事業を営んでいる個人事業主が正確に税金を納めるための制度です。毎年1月1日~12月31日までの1年間の所得を計算して税務署に報告し、納付するべき所得税を確定させます。

【所得とは】
所得=売上-経費

所得とは事業によって得られた売上から仕入や人件費などにかかった必要経費経費を差し引いた残りの利益のことをいいます。会社に雇用されている場合は「源泉徴収」という形で毎月給与から天引きされた分から雇用主が税金を納めていて、年末調整も会社側でしてくれています。

そのため、
● 副業収入が20万円を超えている
● 2カ所以上から給与をもらっている
● 給与が2,000万円以上である

といった場合を除き基本的に自分で確定申告をする必要はありません。
一方、個人事業主は日々の売上や経費などを記録して税務署に自分で正確に申告し、納めるべき税額を申告する必要があるのです。

確定申告書の提出期間

確定申告書の提出期間は原則として毎年2月16日~3月15日までの1カ月間で、日付が土日や祝日の場合は翌日(または翌々日)の月曜日が期限日になります。
確定申告で個人事業主が申告する税金は以下の3つです。

1.所得税
2.消費税
3.復興特別所得税

原則として、2年前の売上が1000万円を超える個人事業主は消費税を支払う義務があります。

このほか、個人事業主は住民税、国民健康保険税、事業税を支払う必要がありますが、これらは所得税を申告すれば市役所から納付額の通知がくるので自分で申告する必要はありません。

確定申告書の提出方法

確定申告書を税務署に提出する方法は3つあります。

1.最寄りの税務署へ出向いて直接提出する
2.税務署に郵送して提出する
3.e-Taxという電子申告システムを使ってインターネット上で提出する

e-Taxは国税庁が管轄する「国税電子申告・納税システム」のこと。オンラインで確定申告や納税ができるだけでなく、開業届や青色申告承認申請書の提出もできるのでとても便利です。

パソコンはもちろん、スマホでも手続き可能なのでいつでもどこでも利用でき、忙しい人にもピッタリです。なお、e-Taxを利用するにはマイナンバーカードが必要です。

確定申告が必要な人

個人事業主で1年間の所得金額から経費と所得控除(基礎控除38万円や医療費控除)などを差し引いた金額が黒字になる人は確定申告を行う必要があります。

確定申告が必要な場合は期限内に税務署へ申告することが義務となっていますが、確定申告を行うことで以下のような控除が受けられて節税できるメリットもあります。

確定申告を行うことによるメリット

医療費控除

医療費控除は高額な医療費がかかった場合に受けられる控除です。
対象となる医療費:治療費、処方せんの薬代、風邪薬などの市販薬の購入費
医療費控除額:その年に支払った医療費-保険金などで受取った金額-10万円
※控除最高額は200万円
※所得合計が200万円未満の場合は総所得金額等の5%

寄附金控除

寄附金控除は寄付やふるさと納税をした場合に受けられる控除です。
寄附金控除額:「特定寄附金の合計額」もしくは「総所得金額等の40%相当額」のいずれか低い金額-2000円

雑損控除

雑損控除額は雑損控除は災害や盗難などで損害を受けた場合に受けられる控除で、以下のいずれか多い方が適用されます。
(1)損害額-総所得金額×10%
(2)災害被害を受けた住宅や家財などの取り壊しや除去に支出した金額-5万円
また、損害が大きい場合は3年間を限度として繰り越して控除できます。

住宅ローン控除

住宅ローン控除は正式名称「住宅借入金等特別控除」で、個人がマイホームを購入したり、リフォームした場合に受けられる控除です。場合によっては、翌年の住民税から一部控除されるケースもあります。
住宅ローン控除額:住宅ローンの年末残高の1%相当額
※最大40万円

個人事業主は確定申告することで収入状況を証明できる

給与所得者の場合は会社から源泉徴収票(1年間の収入や控除の額、所得税額などの一覧)が発行されます。一方で個人事業主は源泉徴収票がないので、確定申告書の控えが収入証明となります。

【確定申告のコピーの提出が求められるケース】
● 融資を受けるとき
● 新たに賃貸住宅を契約するとき
● 子どもを保育園に入れるとき

個人事業主が確定申告をしていないと、上記のような場合に収入証明ができずに必要な書類を用意できなくなってしまいます。そのため、個人事業主にとっては確定申告のコピーは正式な収入証明として非常に重要な書類なのです。

確定申告を行わなかった場合のペナルティ

確定申告をしないということは、ほとんどの場合本来納めるべき税金を納めていないということになります。そのため、確定申告忘れていたり怠ったりすると本来の納税額に加えて延滞税や加算税などの罰金も課せられます。

確定申告をする義務がある人が期限内に申告しなかった場合、具体的に以下のようなペナルティが発生します。

【確定申告をしなかった場合のペナルティ】
●延滞税がかかる
確定申告をしなかった場合はもちろん、確定申告をしていても納付期限を過ぎてから納税した場合は延滞税がかかります。納税が遅れれば遅れるほど延滞税も多額になることがあるので注意が必要です。

延滞税は納期限の翌日から2か月以内なら原則7.3%、2か月を経過した後なら原則14.6%が課されます。ただし、毎年財務大臣が告示する「特例基準割合により計算した税率」と14.6%(2か月以内は7.3%)のうち、どちらか低い税率で計算するため、税率が14.6%になることはほぼありません。

(※参考元:国税庁

●無申告加算税がかかる
確定申告をせず納税をしなかった場合は、本来納めるべき税額に加えて税額に応じた罰金(無申告加算税)がかかります。

原則として所得税が50万円以下は15%、50万円を超える部分は20%の無申告加算税が課されます。なお、税務署から調査が入る前に期限後に自己申告した場合、納める所得税の金額に関わらず無申告加算税の課税割合が5%まで軽減されます。

(※参考元:国税庁

●重加算税
税額計算に対する悪質な隠ぺいや偽装など、意図的に申告を行わずに税務署から指摘を受けた場合、無申告加算税だけでなく重加算税が課せられます。重加算税は、申告していた場合は税額に対して35%、無申告の場合は40%を乗じた金額がペナルティとして課されます。

●青色申告特別控除額が減額される
青色申告には、所得金額から65万円または10万円を控除できる「青色申告特別控除」という措置がありますが、期限後申告の場合は控除額が10万円に下がります。

●青色申告の承認が取り消しになる
青色申告をしている人が2年連続で期限内に申告を行わなかった場合、控除額に関わらず青色申告の承認を取り消され、制度が利用できなくなります。また、青色申告の承認を取り消しされるとその後1年間は再申請できないので、翌年度も白色申告で確定申告しなければなりません。

以上のように、確定申告をしなかったり期限を過ぎてから申告をすると、ペナルティによって罰金が課されるだけでなく次年度以降の確定申告にも影響を及ぼしてしまいます。

確定申告の種類(青色・白色)

個人事業主が確定申告を行う際には、白色申告と青色申告の2種類があります。かつては確定申告書類の色が青色や白色でしたが、現在は用紙の色はどちらも同じです。
大きな分類としては以下のとおりです。

● 白色申告:必要書類が少なく、確定申告は簡単だが節税できない
● 青色申告:必要書類が多く、確定申告が煩雑だが節税できる
といったイメージです。

初めて青色で確定申告する個人事業主は申請が必要

個人事業主の場合は自分で申請を出さない場合は自動的に白色申告の扱いになります。そのため、青色申告をする場合は前年の3月15日までに(新規開業の場合は開業日から2カ月以内に)税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。

青色・白色のそれぞれの特徴とメリット

青色申告と白色申告の大きな違いは受けられる控除額の大きさですが、青色申告・白色申告のどちらを選べば良いかは事業規模やビジネススタイルによって変わります。そこで、ここでは青色申告と白色申告のそれぞれの特徴やメリットを詳しく解説します。

青色申告の特徴とメリット

青色申告は白色申告よりも会計業務や必要書類が多く手間がかかりますが、節税につながる特典が大きいのが特徴です。開業届と青色申告の申請を出したうえで、継続的に事業所得がある個人事業主は青色申告が可能です。

【青色申告で必要な書類】
● 複式帳簿
● 賃借対照表
● 損益計算書

【青色申告のメリット】
●最大65万円の特別控除が受けられて節税になる
青色申告をすると特別控除が受けられるので、最大65万円を所得から差し引けます。特別控除分を差し引けば、その分納税額が少なくなるので節税になります。

●3年間赤字が繰り越せる
青色申告では3年間赤字の繰り越しができます。開業したばかりの年はどうしても経費がかさみ、赤字になることがあります。このような場合に便利なのが事業の赤字を翌年以降3年間の黒字と相殺できる制度です。
たとえば今年は100万円の赤字で、翌年は200万円の黒字だった場合、青色申告なら100万円(200万円-100万円)にかかる税金だけを支払えばよいのです。

●家族への給与を経費で計上できる
青色申告の場合手続きをすれば生計をともにする家族への給与を経費計上できます。経費で計上できる金額には条件が定められていますが、税金の対象となる売上から経費を差し引けるので大きな節税となります。
●家賃や電気代も経費計上できる
自宅を事務所にしている個人事業主の人は、青色申告なら家賃や光熱費、インターネット通信費などを経費計上できます。家賃の全額を経費計上することはできませんが、事業用と個人での使用分を分けて経費で落とすことが可能で、これを家事按分(かじあんぶん)と呼びます。
家事按分を活用すれば生活に必要な固定費の一部を経費計上できるので、大きな節税効果が得られます。

白色申告の特徴とメリット

白色申告は青色申告の申請をしていない個人事業主が行う確定申告で、年間の収入金額や収入の種類に関わらず誰でも選べる申告方法です。
個人事業主が白色申告する際に必要な確定申告書類は以下のとおりです。

● 確定申告書類B
● 各種控除関係の書類
● 収支内訳書

白色申告は青色申告のような特別控除がないので、所得が増えれば増えるほど税負担が増えてしまいます。

【白色申告のメリット】
●事前申請不要
青色申告の申請をしていない限り自動的に白色申告になるので、事前の申請は必要ありません。

●帳簿づけが簡単
白色申告の最大のメリットは帳簿付けや決算の手続きが簡単なことです。記帳も単式簿記で良いので、比較的簡単に作業を完了できます。

まとめ

個人事業主にとっては大事な収入証明書類にもなるのが確定申告です。青色申告は手続きが少し煩雑ですが節税できるメリットは大きくなり、白色申告は節税効果はありませんが簡単に申告できるのがメリットです。

初めて確定申告をする個人事業主は、白色申告と青色申告それぞれの特徴やメリットを理解し、自分の事業規模に合う方法を選ぶことが大切です。

事業の決算を行って確定申告をすることは、1年間の事業収支を把握する、見つめ直す良い機会にもなります。また、節税効果が大きい青色申告を選択する場合は事前申請も忘れずに行いましょう。